アメリカ版TENNIS
1992年11月号
簡単な処理しやすい球を強打する方法
文:Pete Sampras、Norman Zeitchick


編集長コラム / 簡単なショットを決める事

「やっつけろ!」ネットについている私の方へ、弱いロブがフラフラと飛んでくると、私は自分に言い聞かせた。目の端に、対戦相手がベースライン中央に急いで戻ろうとしているのが見えた。彼から遠ざかるよう、少し角度をつけてボールを打てば、私はゲームに勝つだろう。私は横に向きを変えてラケットを引き、左手でボールを指さした―――そして、後方のフェンスにボールに打ちつけてしまった。

そういう事がいつも、私には起こるようだ。簡単に決められるショットを得る。そして私は易しいオーバーヘッドをネットにかけたり、あるいは易しいボレーを確率の低い角度に狙ったりしてしまう。あるいは、相手がコートから追い出されているのに、弱々しいボールを返して、彼にゲームに戻るチャンスを与えてしまう。

それが、編集主任ノーマン Zeitchick がカバーストーリー「簡単な処理しやすい球を強打する方法」(30ページ)に取り組み始めた時、特に興味を感じた理由である。これは、私が本当にもっと学ぶべきものだと感じた。

ノーマンと編集者ドナ・ドハティはこの記事を書くのに、現役のプロ選手の協力を仰ぎたいと考えた。「この記事をまとめようと決めた時、我々はジミー・コナーズを使いたいと思った」とドナは言う。「しかしジミーに訊くと、彼は『若いやり手の1人に頼んだらどうだい?』と言った。まあ、我々はそうする事にした」

ノームは進歩中のピート・サンプラスを提案した。そして彼は、コーチであるテニス指導記者ティム・ガリクソンと一緒に、細部を工夫して解き明かしてくれた。彼らはフロリダ州ブラデントンで、スタッフ・カメラマンのドム・フローレと合流した。サンプラスは今年のUSオープン(90ページ)準優勝者で、1990年のチャンピオンだが、今月のATP世界選手権(88ページ)のタイトル防衛、ナンバー1レースに加わる。

「フォトセッションの間に、どういう場合に簡単なオーバーヘッドを失敗するか、ピートに尋ねた」とノームは言う。「彼は『僕は失敗なんかしない』と言った。なるほど、今年のオープンで、私は彼が簡単なショットを何回かミスするのを見たし、今後もその質問をするだろうと思ったよ!」

また今月号では「10代の混乱」第2部(45ページ)をお送りする。そこでは、10代の選手が大金のためにプレーする苛酷さでズタズタにされないよう、プロツアーを改革する提案をしている。さらに今月号では、「合衆国最高のテニスリゾート50」(60ページ)を選出している。

簡単な決め球をミスする事について? 周りの同僚が言うように、まだまだ私は学ぶべきらしい。

―――ピーター・フランセスコーニ / 編集長




対戦相手がやっと返してきた、君が決めるばかりの高く浮いた、遅くて弱々しいボールをミスするほど苛立たしい事はない。僕も知っている。たいていのプレーヤーがそういう簡単な球をミスするのは、意気込みすぎて、強く打ちすぎるか打ち急ぐからだ。あるいは気を抜きすぎて、充分に積極的なプレーをしないからだ。

しかし最も大切なのは、少しばかりの集中と自信である。ここに挙げるのは、僕がそれらの簡単なボールを決めるために用いる、いくつかのシンプルなテクニックである。君が相手にミスのつけを払わせるのにも役立つはずだ。

高く浮いたボレー

相手がネットの高い所を越える、弱い浮いたボールを打ってきたら、僕は前進し、叩いてウィナーを決める。じっと立ったまま、ボールが来るのを待っていてはいけない。カギは、ネットにより近い場所で簡単なボレーを打つために、そのショットを捕らえにいく事だ。

ボールから目を離さず、バックスイングを短くして、打ち下ろすのではなく振り抜く。そしてフォロースルーを長く取る。打ち急ぐと、飛ばしすぎたりネットに引っかけたりしがちである。バランスのとれた、コントロールの利いた状態で、そのボレーを深い所かアングルにピシャリと放ち、ポイントを取ろう。

1.前進する。
2.短いバックスイングを取る。
3.下へではなく、振り抜く。
4.フォロースルーを取る。

短いオーバーヘッド

ネットについている時に、慌てて後ろに下がる必要のない短いロブを相手が打ってきたら、シメタッ!と思うはずだ。しかし多くのプレーヤーは、この簡単なオーバーヘッドを、いつもバックフェンスかネットに打ちつける。

主な問題点は、打つ瞬間までずっとボールを見ていない事だ。打つその時まで、頭を上げ、ボールから目を離さないようにしよう。もう1つの問題点はフットワークである。スマッシュを打つ際に、足を止めていてはいけない。身体の向きを変えたら、ラケットを素速くかつぎ上げ、ボールを追い、そして手首を利かせて振り抜こう。

打ち急いだり、強く打ちすぎてはいけない。ボールをスタンドまで弾ませる必要はないのだ。しかし、おざなりすぎてもいけない。しっかりとボールを打つか、あるいはアングルに決めて、ウィナーを取ろう。

1.素速く身体の向きを変える。
2.ラケットを素速くかつぎ上げる。
3.打つためにボールを追う。
4.手首を利かせて振り抜く。

コート中央の短く高いボール

コート中央でバウンドした、浮いた短いボールは、まさに決めてくれと言わんばかりだ。しかし準備して間を取り、打ちすぎを避けないと、ミスしがちなショットである。

まず早めにボールの所へ行き、コントロールとバランスの取れた状態で準備する。もし走ったままボールを捕らえたり、意気込みすぎたり打ち急ぐと、トラブルを抱える事になる。

ショットを打つ準備したら、標準的なバックスイングで、下方にではなく、振り抜いてボールを打とう。あまりフラットに打ってはいけない。多少トップスピンをかけ、コーナー深くに強打しよう。

ボールの所へ行き、準備して、飛ばしすぎない事に集中しよう。そうすれば毎回ピシャリとウィナーを放てるだろう。

1.早くボールの所へ行く。
2.コントロールの利いた状態で準備する。
3.スピンを使う。
4.振り抜いてボールを打つ。

オープンコートへのグラウンドストローク

相手がコートから追いやられてオープンスペースができたら、パワーではなくプレースメントが、そのポイントを勝ち取るカギである。

通常と同じくボールに踏み込み、フルスイングでボールを早めに捕らえて、振り抜いてボールを打ち、完全なフォロースルーを取ろう。多くのプレーヤーは、強く打ちすぎたり、あるいはミスを避けようと神経質になって、スイングが短くなったりする。極端になってはいけない。

コントロールの利いた状態で、そしてもちろん、相手ではなくボールを見よう。相手と反対側のコーナーへ攻めよう。しかしラインを狙おうとしてはいけない。君の望む所へショットを打てば、相手はコート上で無力になるのだ。

1.踏み込む。
2.通常のフルスイングをする。
3.プレースメントを狙う。
4.相手ではなく、ボールを見る。


●簡単な決め球のためのチェックリスト●

どんな種類の処理しやすい球を得た時にも、これら4つのキーポイントを念頭においておこう。そうすれば君もプロのように打ち込めるだろう。

1.ボールを見る。
2.打ち急がない。
3.強く打ちすぎない。
4.攻撃的になる。


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