タラハシー.com
2010年1月8日
上達するためには、自分より弱い相手とプレーする
文:Matt Corey


誰もがある時点で、「神話」を耳にしてきた。自分のテニスゲームを向上させる唯一の方法は、自分よりも上の人とプレーする事である、と。しかしながら、ゲームを学ぶにつれて、自己の最大の可能性を引き出すためには、自分と同レベルかほぼ同等の人と50パーセント、自分より上の人と25パーセント、そして残りの25パーセントは自分より弱い人とプレーするよう、時間を配分すべきなのである。誰もが自分より上の人とプレーしたがるが、もし皆が自分より上の人とだけプレーするとしたら、実際は相手が存在しないという理屈になる。考えてほしい。君が上のレベルでプレーするには、相手となる誰かはレベルを下げてプレーせざるを得ないのだ。私が提案したいのは、適切に「レベルを下げて」プレーする事によって、自分のゲームを向上させうる方法である。

「神話」が誤りである事を示す、1つの単純な理由がある。何であれ新しい事を学ぶには、「最も易しい段階」から「最も難しい段階」へ、「最もゆっくり」から「最も速く」へと順を追って学ぶ必要があるのだ。この事が、変更を実行するに際して、すぐに自分と同レベル、あるいは上のレベルの人とプレーするのは、上達という目標に有益とは言えない理由である―――段階を踏まずに学んでいるからだ。考えてほしい。どちらが容易か―――どんな状況でも必ず勝てると分かっている者を相手にする事と、あるいは勝てるチャンスはほとんどないと分かっている者を相手にする事とでは? 段階を踏まずに学ぶと、ストロークのテクニックや戦術に悪いクセがつき、実行している変更に対して自信を失うにつれて、大きな挫折感を抱く事もありえるのだ。

バージニア州ウィリアムズバーグにいる私の元アシスタント・プロは、ピート・サンプラスがそこでトレーニングをし、世界ナンバー1だった頃、サドルブルックでしばらく働いていた。私のアシスタントはしばしば、サンプラスが世界150〜200位の男たちと練習試合を行うのを見た。サンプラスはあっさりとサーブを打ってプレーを始め、そして全部のセットをベースラインの後ろでプレーしていた。サンプラスはサーブ&ボレー・プレーヤーで、最大の武器はファーストサーブだった。それでは、なぜ彼はこんなやり方をしていたのか? ベースラインの後ろからポイントを支配しようとする事で、ベースライン・ゲームを向上させるためだったのだ。彼は「B」と「C」レベルのゲームを向上させているように見えた。「A」ゲームであるサーブ&ボレーは、封じていたのだ。

もし君が新しい戦術を学ぶなら、あるいはショットの多様性を身につけたいのなら、最初は自分より弱い相手とプレーするのが理想的である。「A」ゲームは、君がおおかたのポイントで最も快適に感じるプレーであり、最もプレッシャーがかかった時に行いがちなプレーである。「A」ゲームでないもの、つまり「B」や「C」のゲームは、君がそれにどれだけの自信を持っているかに左右されるという事を考慮してほしい。換言すれば、君は「B」「C」レベルのゲームで勝つという、調子を下げても充分に競い合える状況を求めているのである。

例えば、君がステイバックして一日じゅうボールを打ち返している(君の「A」ゲーム)4.0レベルの粘り屋だとしよう。だが次のステップへと進み、ボールを早いタイミングで捕らえたり、ベースラインに近い位置でプレーしたり、ベースラインの内側へと進めるようショットの鋭さを増したり、あるいはサーブ&ボレーを武器として加える事などによって、ゲームにもっと攻撃性を加えたいと望むのなら、それらの新しい事柄に対して自信をつける最適の環境は、自分より弱い相手(この場合は3.5弱か3.0強のプレーヤー)と、プレッシャーのかからない練習セッションをする事である。上達させたい要素だけに焦点をしぼって、ひたすら打つ、あるいはポイントの中で試みる事に練習セッションのすべてを使おう。サンプラスがしていたように、君の「A」ゲームを封じるのだ。

自分より弱い人とプレーすれば、相手からの返球は弱いものである事が多い。したがって、君が新しい攻撃的な戦術を試す機会が得られるのだ。自分より弱いプレーヤーとのセッションを何回かこなし、新しい戦術に対する一定の自信を得たら、自分と同レベルの相手とプレーしてみよう。そして彼ら相手に何回かセッションをした後に、自分より上の人に挑戦しよう。これが、自分のゲームを最大限に向上させるために用いるべき上達法である。「B」「C」ゲームが向上すると、「A」ゲームの効力も増大する。そしてゲーム全体が向上してくるにつれて、君のリーグや大会の試合で、より良い結果が出始めるだろう。

もし君がフォアハンドやバックハンド、あるいはどんなストロークであれ、新しいスウィングを学んでいるのなら、自分より弱い相手とプレーする事は、その新しいテクニックを身につけるのに完璧な状況だ。圧倒される事はないだろう。実際、君には準備する時間的ゆとりが充分にあり、プレッシャーを感じずにショットの感触を身につける事ができる。同様に適切なフットワークを学ぶ際も、遅いボールに対しての方が、ずっと習得しやすいだろう。自分より弱い相手とポイントやゲームをプレーしよう。そこでは自信をつけるために、新しいテクニックだけを使うのだ。そこから、先ほどの例と同じく、まず自分と同レベル、次に上のレベルの相手とプレーしていこう。

自分の「B」と「C」のゲームプランを向上させる事、あるいはストロークを向上させる事は、全体的なゲームの向上に極めて重要である。必要な変更を初めて実行する時には、自分より弱い相手とプレーする事によって、段階を踏んで学び、新しい技能に対して必要な自信をつけるのだ。これを新年の決意としよう:君のテニスの可能性へと到達する事に直接関わる、巨大な未開発の資源を利用するために―――自分より弱い相手とプレーする事。約束しよう、君はそこから何かを得るだろう。


ピートのテニス指南目次へ戻る  Homeへ戻る