オーストラリアン・オープン
1997年1月24日
クレーの王者はメルボルンの皇帝に兜を脱ぐ
文:Mark Bendeich
*記事の出所を保存していなかったため、不明です。


メルボルン―――金曜日、オーストラリアン・オープンにおいて「クレーの王者」トーマス・ムスターは、世界ナンバー1のピート・サンプラスに敬意をもって頭を垂れた。

サンプラスはストレートセットの圧勝で決勝へと進み、オーストリア人(ムスター)の賛辞を受けて、メルボルンパークのセンターコートにて正真正銘の君主である事を立証した。

最終セットで猛攻をかけるサンプラスには、ミスなどあり得ないようだった。あるポイントでは、満員の観客の幾人かは膝を突き、腕を差しのべ、恭順の意を示すかのように腰を深く曲げてお辞儀した。

しかし、へりくだったムスターがそのジェスチャーを繰り返したのは、サンプラスがネットポスト回しの反射的なバックハンド・ウィナーを打つという、奇跡に近い技をやってのけた時だった。

「あれは完全に運だったよ。ちょっとやってみたら、上手くいったんだ。こんな風に事が運ぶとは、信じられなかったよ」準決勝の後、サンプラスはレポーターに語った。

試合の結果は疑いようがなかった。第2セットでムスターがサンプラスに対してセットポイントを握った時を除いては。それ以外は、サンプラスは観客に息を呑ませ、ニックネームである「ピストル・ピート」の名に恥じなかった。

サンプラスはコーナー深くボールを叩き込み、彼のバックハンドを打ち砕こうとするムスターの粘り強い試みに抗して、フォア、バックともグラウンド・ストロークを炸裂させた。

「彼はナンバー1選手だ」とムスターは後に言った。「自信に満ちており、最高のオールラウンド・プレーヤーだ。そういう事だ」

サンプラスの勝利を強調すると、第3セットでムスターが1-4とされた時、1人の観客が世界ナンバー5に心からの激励を送り、笑いを誘う事になった。

「トーマス、君ならできる!」と彼は叫んだのだ。

他の観客は面白がり、「ピート、左手でプレーしてくれ」「おい、ピート、真面目にやれ」と笑った。

サンプラスは記者会見よりもコート上での(プレーの)方が雄弁だが、これ以上いいプレーはできなかっただろうと後に認めた。「僕は何の不満もないよ」と彼は言った。

サンプラスは決勝でスペインのカルロス・モヤと対戦する。9つ目のグランドスラム・タイトルを獲得し、オーストラリアン・オープンのカップを掲げる2度目のチャンスを狙う。

ノーシードのスペイン選手は、決勝戦への道のりで前回優勝者のボリス・ベッカー、第2シードのマイケル・チャンを倒した。

「彼はマイケルを手際よく倒し、自信に満ちている。また彼には失うものは何もない。だから日曜日はいい戦いになるだろう」前回モヤと対戦した時の事を振り返り、サンプラスは語った。

2年前、サンプラスはモヤと練習でタイブレークの勝負をしたのだ。当時モヤは300位台で、バルセロナで催された新人選手のためのテニスクリニックでの事だった。サンプラスが勝った。

「あのタイブレークの頃とは違うよ」とサンプラスは言った。「彼はよりタフになっているだろう」

日曜日にはサンプラスが20歳のモヤを負かすとしても、彼がフレンチ・オープン、すべてを征服するアメリカ人から逃れる唯一のグランドスラム・タイトルを掴むまで、彼自身のキャリアに冠を授けられる事はないだろう。

しかし、彼は「ここで優勝できたら、素晴らしいかたちで1年を始められるだろう」と語った。




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