リンゴは落ちるのに月はなぜ落ちないか.ニュートンに絡んでよく聞かれる話だが,月も絶えず落下しているのだ,という話もよく聞かれる.月は地球の周りをほぼ等速円運動しているが,等速円運動する質点の速度は,ハンマー投げなどの映像を見ればわかるように,円の接線方向に向いている.したがって,円運動を維持しようと思えば,円の中心に向かう力を質点に加え,速度の方向を調整してやる必要がある.この力が,いわゆる向心力である.月の場合は地球の引力がこれに相当する.つまり,月は地球に向かって常に落下しているからこそ,周回を維持している,というわけだ.
定性的にはわかりやすい説明だと思うが,定量的にはどうだろうか.そこで,少々計算をしてみた.
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半径をr,角速度をωとすれば,P0にある質点の速度はrωである.したがって,質点はdt時間後にはrωdtだけ進みP'1に達するはずだが,向心力によりP1地点まで「落下する」.落下距離は
(r2+(rωdt)2)1/2 − r
=r(1+(ωdt)2)1/2 − r
≒r(1+1/2(ωdt)2) − r
=1/2r(ωdt)2
と計算できる.そして,この距離を丁度dt時間で等加速度で「落下」させるために必要な力fの大きさは,質量をmとすると,
1/2(f/m)dt2=1/2r(ωdt)2
f=mrω2
となる.確かに,これは,必要な向心力の大きさである.