A地点からB地点に移動する際の最短距離は、両地点を結ぶ直線である。だから、その直線に沿って真っ直ぐに進めば最短時間でB地点に到達できることは、すぐにわかる。ならば、道路事情が悪く途中から速度を出せない場合はどうだろうか。
微分法を直接使わずに、図を描いて考えてみよう。
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図で、横線から上は舗装されていて速度を出せるが(この地域での速度を1とする)、横線から下は未舗装で速くは進めないとする(この地域での速度を1/nとする)。この場合、未舗装区域への進入点Pを図のように少し左にした方が、未舗装区間が短くなりB地点に早く到達できると思われる。しかし、左に寄りすぎれば、全体の距離が長くなり、所要時間は却って長くなるだろう。したがって、どこかに所要時間が最短になる点があるはずである。
図のPがその点だとしよう。このとき、進入点をごく僅かx だけずらすと、走行距離はどのように変化するだろうか。第1近似で計算すると、図から、前半では
Δm =x sinθ
だけ短くなる一方、後半では
Δl =x sinη
だけ長くなる。したがって、所要時間は
nx sinη−x sinθ
=(n sinη−sinθ)x
だけ長くなることになる。P地点を通過すれば最短時間になるのだから、第1近似での増分を表すこの式はゼロになるはずである。したがって、
n sinη−sinθ=0
という関係が成り立つ。これが光の屈折を表していることは言うまでもあるまい。