リンゴとミカンを買ってきた

炉辺夜話数学編第6夜

1個90円のリンゴと1個60円のミカンを20個買いました。代金は1530円でした。リンゴとミカンを幾つずつ買ったのでしょうか。お馴染み鶴亀算のリンゴ&ミカン版である。

さて、その解法だが、学校では次のような表を作って説明しているようだ。

リンゴ 012 ? 181920
ミカン 201918 ? 210
代金 120012301260 1530 174017701800

ミカンだけを買ったとすると代金は60×20=1200円、ミカンを1つ減らしリンゴを1つ増やすと(合計の個数を変えない)、代金は30円増え、1200円と1530円の差額は330円だから、リンゴは330÷30=11個買ったはず、という論法である。学校の授業では、これで一件落着とするようだが、もう少しいろいろな計算法を試みてもよいと思われる。

たとえば、表の右端のケース、つまりリンゴだけを買ったという仮定から出発したらどうなるかと問うことができるだろう。もちろん、ほぼ同じ論理で計算できるのだが、それがわかれば表の途中から始めても同じであることに気付く子も出てくるのではあるまいか。たとえば、リンゴを1530÷90=17個、ミカンを20−17=3個と仮定し、代金1530+60×3=1710円から計算する。あるいは、半々にして、リンゴ10個、ミカン10個と仮定してもよい。

この論理は、合わせて20個という条件を軸に、各個数を任意に仮定し、代金が合うように調整して解に至る、という考え方である。

これに気付けば、代金が1530円という条件を軸にしても、同様の論理を展開できるのではないかというアイディアが湧いてくるだろう。

つまり、代金1530円でリンゴだけを買ったとすると前述のように17個のはずだが、買ったのは合わせて20個である。代金で見るとリンゴ2個はミカン3個に相当することから、リンゴ2個に代えてミカン3個にすれば(代金を変えない)、総数は1個増えることになる。したがって、20−17=3個増やすには、買うリンゴを2×3=6個減らし、ミカンを3×3=9個増やせばよい。この方法には、1530÷90が割り切れなければリンゴだけ買ったという仮定ができないという欠点がある。その場合は、ミカンを混ぜて調整しなければならない。

リンゴ 171513 ? 531
ミカン 036 ? 182124
個数 171819 20 232425

どちらの解法も2つの条件の一方を固定しているが、要するにリンゴとミカンの個数の組合せを総当たりで調べている。本当に総当たりすれば21×21=441通りになるから、それに比べればかなりの省力化ではあるが、本質に大差はない。ならば、姑息な手は止めにして、総当たりで考えてみよう。リンゴとミカンをそれぞれ0〜20個として組み合わせた表を作ると、それぞれの組合せの個数は下表のようになる。個数の条件を満たすのは、赤で示した対角線上の組合せである。

個数 リンゴ
01234 56789 1011121314 1516171819 20
ミカン0 01234 56789 1011121314 1516171819 20
1 12345 678910 1112131415 1617181920 21
2 23456 7891011 1213141516 1718192021 22
3 34567 89101112 1314151617 1819202122 23
4 45678 910111213 1415161718 1920212223 24
5 56789 1011121314 1516171819 2021222324 25
6 678910 1112131415 1617181920 2122232425 26
7 7891011 1213141516 1718192021 2223242526 27
8 89101112 1314151617 1819202122 2324252627 28
9 910111213 1415161718 1920212223 2425262728 29
10 1011121314 1516171819 2021222324 2526272829 30
11 1112131415 1617181920 2122232425 2627282930 31
12 1213141516 1718192021 2223242526 2728293031 32
13 1314151617 1819202122 2324252627 2829303132 33
14 1415161718 1920212223 2425262728 2930313233 34
15 1516171819 2021222324 2526272829 3031323334 35
16 1617181920 2122232425 2627282930 3132333435 36
17 1718192021 2223242526 2728293031 3233343536 37
18 1819202122 2324252627 2829303132 3334353637 38
19 1920212223 2425262728 2930313233 3435363738 39
20 2021222324 2526272829 3031323334 3536373839 40

同様に、代金は下表のようになる。代金の条件を満たすのは、青で示した線上の組合せである。

代金 リンゴ
01234 56789 1011121314 1516171819 20
ミカン0 090180270360 450540630720810 900990108011701260 13501440153016201710 1800
1 60150240330420 510600690780870 9601050114012301320 14101500159016801770 1860
2 120210300390480 570660750840930 10201110120012901380 14701560165017401830 1920
3 180270360450540 630720810900990 10801170126013501440 15301620171018001890 1980
4 240330420510600 6907808709601050 11401230132014101500 15901680177018601950 2040
5 300390480570660 75084093010201110 12001290138014701560 16501740183019202010 2100
6 360450540630720 81090099010801170 12601350144015301620 17101800189019802070 2160
7 420510600690780 870960105011401230 13201410150015901680 17701860195020402130 2220
8 480570660750840 9301020111012001290 13801470156016501740 18301920201021002190 2280
9 540630720810900 9901080117012601350 14401530162017101800 18901980207021602250 2340
10 600690780870960 10501140123013201410 15001590168017701860 19502040213022202310 2400
11 6607508409301020 11101200129013801470 15601650174018301920 20102100219022802370 2460
12 7208109009901080 11701260135014401530 16201710180018901980 20702160225023402430 2520
13 78087096010501140 12301320141015001590 16801770186019502040 21302220231024002490 2580
14 840930102011101200 12901380147015601650 17401830192020102100 21902280237024602550 2640
15 900990108011701260 13501440153016201710 18001890198020702160 22502340243025202610 2700
16 9601050114012301320 14101500159016801770 18601950204021302220 23102400249025802670 2760
17 10201110120012901380 14701560165017401830 19202010210021902280 23702460255026402730 2820
18 10801170126013501440 15301620171018001890 19802070216022502340 24302520261027002790 2880
19 11401230132014101500 15901680177018601950 20402130222023102400 24902580267027602850 2940
20 12001290138014701560 16501740183019202010 21002190228023702460 25502640273028202910 3000

この2本の線が交差する組合せが解である。直ぐにわかるように、これは二元連立一次方程式のグラフによる解法に他ならない。買ったリンゴの数を x、ミカンの数を y として、

          xy =   20
        90x + 60y = 1530
  

という式を立て、グラフを描いて解いたことに相当する。第一の解法は、リンゴの数を x とするとミカンの数は個数の条件から 20 − x となることから、

        90x + 60(20 − x)= 1530
  

という一次方程式を立てることに相当する。また、第二の解法はリンゴの数を x とするとミカンの数は代金の条件から(1530 − 90x)÷ 60 となることから、

        x +(1530 − 90x)÷ 60 = 20
  

という一次方程式を立てることに相当する。

文章題に含まれている条件、未知数の設定と条件との関係、問題の世界と数学の世界との対応を認識することは中学以降の学習に必要であり、また初期の目標でもある。したがって、小学校において、このような形で学習を深めておくことが必要だろう。