審査基準によるソフトウェア関連発明
(ビジネスモデル発明)の分類
ソフトウェア関連発明を審査基準ではどのように分類しているかを紹介します。
これは、最初に説明した、特許庁でのビジネスモデル発明についての解説中、
@コンピュータ基礎技術、通信基礎技術
A電子決済や電子マネー等のビジネスシステムインフラ技術
に当初より適用されていたもので、当然、ビジネスモデル発明にも適用されます。
すなわち、
- ソフトウェアによる情報処理に自然法則が利用されている発明
- ハードウェア資源に対する制御または制御に伴う処理を行うもの
- コンピュータにより制御を行うもの
- コンピュータ自体のオペレーションに関するもの
- 対象の物理的性質又は技術的な性質に基づいて情報処理を行うもの
- ハードウェア資源が利用されている発明
以上の分類は、産業上利用性を判断する上で有効となりますので、産業上利用性のところで詳細に説明します。
ハードウェアとの関連から見た分類
次に、明細書を書くにあたって、審査基準を満たしつつソフトウェア関連発明を把握するという観点からは、以下のようにハードウェアとの関連に重視して分類するとよいでしょう。なお、このような分類は私見によるものですのでご了解下さい。
但し、ビジネスモデル発明は、ハードに対する制御という観念が希薄ですので、次のような分類が有用であるとは思えませんが、コンピュータを利用しているという点で、ハードを意識せざるを得ません。その限りにおいて、コンピュータシステムとビジネス方法との関連を意識していただきたいと思います。
- 外在的ハードに対するコンピュータ制御
例えば、「エンジンのコンピュータ制御」や「製造ラインのコンピュータ制御」など、すでに外部に制御対象が存在し、その制御対象についてコンピュータで制御するものです。このような発明は、発明の特徴点が理解しやすいのが通例です。すなわち、対象のハードが明確で、そのハードに対しどのような制御を行っているのかを理解すればよいからです。また、ハード自体新しく開発された場合が多いでしょう。このような発明では、外在するハードを機械の明細書のように特定し、それら機械的構成にコンピュータによりどのような制御を行っているかを記載すればよいでしょう。また、制御対象であるハードが存在するので、自然法則利用性が否定されることもないでしょう。
- 内在的ハードに対するコンピュータ制御
例えば、「仮想記憶方式」や「メモリ管理方式」、「パイプライン処理」など、コンピュータ内部における処理に特徴を有する発明では、コンピュータのハード自体には特徴がなく、その処理の仕方に特徴がある場合ですので、発明の特定が若干容易でないという側面があります。
しかし、そのソフトウェアの行っている機能が、コンピュータ上でどのように実現されているかを見つめれば、処理の対象であるハードが見えてくるので、あとは比較的容易に発明の特定が容易となります。また、この場合もハードが存在するので、自然法則利用性が否定されることはないでしょう。
- 見かけ上ハードに依存していないソフト
制御対象としてハードが存在せず、処理の内容がもっぱら何らかの演算であったりすると、その処理内容の中にハードウェアが意識されない場合があります
例えば、円の描画方法、かな漢字変換方法、カーソル制御方法、などでは、ハードを制御しているという意識はかなり薄くなります。よって、発明を捉えずらく、また、表現もしにくい場合が多くあります。このようなソフトウェアの場合、できるだその機能に着目し、その機能がコンピュータ上どのように実現されていくのかを考えることで、特定が可能となっていくように思えます。また、この種の発明では、自然法則の利用性が否定される可能性もあるので、表現には注意を要します。
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