「ウッ…ググゥッ。ウグムムゥ」
 先ほどの痛みでの苦しそうな声とは別種の苦しそうな呻き声を猿轡の下から漏らし、彼女は後ずさりを続ける。膝の痛みで思う様に後に進めないのであるが、必死になって後へ後へと片方の足で身体を動かす。しかし狭い院内である。すぐに角に突き当たってしまった。
「ムゥッ…ウムゥ!」
 猿轡の奥から抵抗の呻きを上げ、彼女が上目遣いで私を睨む。その目の奥にはなんとも言えない諦めと抵抗の境界が写 し出されていて、私が針を持って迫るとその境界がだんだんと諦めの方に侵食されているのが分かる。しかしその分、抵抗の境界線が強く反発の光を輝かせている。
 だがいったい、この光景を人が見たら何と思うだろう?どう考えても私が少女に変態行為をする寸前の様にしか見えない。私は針を持ち、目の前には猿轡をされ縄で縛り上げられた少女である。誤解だ診療だと言い張った所で絶対に認めてはもらえない。行き過ぎた熱意?そう取ってくれる人も居た事には居たが…まぁ、いい。過ぎた事だ。

 そんな事を考えている間にも彼女はまだ最後の抵抗とやらを諦めていないらしい。顔を左右に振り、猿轡の奥から何かを叫び、縄を何とかして振り解こうと縛られた身体をくねらせ続けていた。 「まだ大人しくならないのかい?じゃあしょうがない、諦めが着く様にしてあげようか」
 私は針を捨て、彼女ににじり寄り、サポーターに手をかけた。

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