「まったく…駄目じゃないか、言う事を聞かなきゃ」
 体育教師をやめ、接骨院を開業している私の元には学校関係の患者が多い。やはり「元教師」というとこんな田舎では聞こえが良いし覚えも良い。あっという間に噂は広がり、部活帰りの子供達が来る様になった。
  自分で言うのもなんだがそれなりに「親身」ではあるし、教師時代につちかった「子供に指導するポイント」も的確である。それに私が都会から来たと言う事もあり、興味深く話を聞きにくる子達もあっていつも院内は盛況である。あまりにうるさくて閉口する事も多々あるのであるが。
 都会の学校に勤務していた私がどうしてこんな田舎で医者をしているのかは…まぁ、色々とあったのだがここでは多くを語らない。

 もう診療時間も終わり近くになって、1人の少女が顔を見せた。陸上部所属の彼女は膝を痛めウチに通 っているのだが、この年頃の子にとっては部活動が楽しくて楽しくて仕方なく怪我をしていてもやりたいのだろう、私が少し休めと言っても聞かず、強く言い過ぎたせいかふてくされて治療を2週間位 ごぶさたしていた。
  私の好みのタイプなだけにちょっと残念だったが、致し方ないと思っていた所だった。また彼女の治療が出来て、彼女を触診出来るかと思うと…、おっと、そんな事はない、私は彼女が将来を考えて治療に来てくれる事を望んでいたのだ。

「ほら、そんなだから膝が言う事をきかなくなってるじゃないか、随分と痛むんだろう?」
 少女のサポーターで覆われた膝をちょっと強めに押す。
「あんッ…先生っっ…痛い…」
 少女が苦しそうに声を上げる。サポーターの上からでも膝のおかしさが分かる位 だ、結構悪化している。治療に専念させなくてはとの思いから私は大胆な行動に出る事にした。
「針を試してみよう、ちょっと動くなよ、いいな」
「え…嫌です、他の…低周波の電気治療でどうにかなりませんか」
「どうにかって、今まで来なかったクセに何を言ってるんだい。とにかく、長期の治療になるから少しでも君にとって良い治療法を考えてるんだけどな」
  私が針を取り出すと彼女は立ち上がろうとする。私はどうしても彼女に治療を受けさせたい一心で彼女を動けない様に縛り上げる事にした。
「あっ!先生嫌ッ…ダメ!」
「ダメじゃない、君には治療が必要なんだ。どうしても嫌だと言うならちょっと僕も少し荒療治をさせてもらう」
「や…ヤダァ!!何で縛るんですか、へんた…ウググゥ」
 暴れ、騒ぐ彼女を縄で縛り上げ、猿轡を咬ませた。これでもう彼女も諦めるだろうと思っていたのだが、彼女は外に飛び出ようとする。しかし何かの拍子に痛めている膝ををさらに捻ったらしく扉の前にへたり込んでしまった。
「さぁ、もうこれで観念するんだな」

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