11/17(日)くもり

朝7時、自然と目が覚める。
祐子が少し前にベッドを出たのが判ったけどもうちょっとぬくぬくしていたかったから10分くらいそのままの状態でいた。
足を伸ばしてみた。腿の後ろ、お尻の下あたりが少し筋肉痛のよう。やっぱそうか。
昨日はいっぱい歩いたもんなあ〜

ゆっくり起き出しぼけっとした顔でおはようーと言う。祐子はもうコンタクトを入れたかな?
ゆっくり寝れた?と心配そうに言うのでホントの事を言う。ぐっすり気持ちよく眠れたよって。
しばらくするとコーヒーのいい香り。そして昨日買ってもらったパンをいただく。
ナッツがたくさん入った少し固めのパンはとても美味しかった。甘いパイもペロッと食べてしまう。
甘いパイは私が食べたいと所望したもの。きっと身体が欲したんだろうシュークリームといい、パイといい。

テレビのニュースを見ながら関東はNHKが3チャンネルだということを知った。
私んとこは8チャンでNHK教育が12だ。それが当たり前だと思っていたのでへえ〜。

2人っきりの静かなリビングでパンを食べていると祐子んちの電話が鳴った。
「もしもし○○でございますが」
確か祐子はそう言ったようだった。おまいはどこかの奥様か?
ご主人からの電話だったようで、何だって?と聞いたら
「テレビ番組を予約したいものがあるらしくて私達がいる間にもしかしたら帰ってくるかもしれない」
あらまあ、それは願ったりだわ。お逢い出来るかもしれないのね?でもちょっと待ちなさい。
それなら急いでパジャマを脱ぎ捨て化粧を念入りにしなければならんじゃんねと思って腰を浮かしかけたがどうも私たちが出てからになるらしいとの事。なあ〜んだ。じゃあもうちょっとだれてよう。

8時過ぎ、ここから数駅のところにいる義妹のところへ顔を出すために電話。
「もしもし〜?おはよう私だけど、何時頃に行けばいい?」と聞くと義妹は
「まだ娘と旦那は寝ているんですよ」
なんだとー?お義姉さんがわざわざハードスケジュールの合間をぬって顔を出してやろうっつってんのは前にメールで言っておいたよなあ?もっと気合い入れて待っとらんかいっ

と思ったが1人旅で終始ご機嫌な私は簡単に気分をプラスに変えた。
「じゃ、駅から歩いて行くから場所教えて。今、土地勘のある私の友だちに代わるから」
と祐子に電話を渡して話しをしてもらった。

9時半マンションを出る。日曜の朝だからかな?誰にも逢わずに通路にゴミひとつ落ちてないそのマンションはシーンとしていた。

10時義妹の最寄り駅着。駅前はまあまあにぎやかだったが少し歩くととっても田舎だった。
何だか懐かしい感じがして初めて来た気がしない。(さんざんな事言ってますなあ)
今日はあちこち移動するので左肩に荷物をずっと掛けて歩く事になる。朝から重いでー。
荷物が重いと感じる程したたかに歩いた。やっぱ義弟をたたき起こして駅に迎えに来て貰えばよかったなと後悔するほど。けっ、気の利かない夫婦だなと自力で行くからと言っておきながらそんな事を思ったりてしまった。だってホントに遠く感じたんだもんよー。

やっと着いた。初めて来た。お義母さんすら来たことがない未知の世界。
でも待てよ?確かマンションを買ったと言っていたよな。アパートに引っ越したんかな?
などと思いながら5階まで階段を上る。やっぱアパートだろここはよ?っつー雰囲気。
祐子のところと比べてしまって頭にはてなマークが飛び交う。
着いてからエレベーターはどこなのかちょっと探したが無駄だったので階段をブツブツ言いながら上った訳だ。

ちんぽーん...しばらく無言...おい、早よー返事せんかいっ お義姉さんだぞっ
駅から重い荷物を持ってたくさん歩いて5階までやっと上ってそれも新潟からわざわざ来たんだぞとここが目的地でもないのに文句を言った。いや、思った だった。
やっと返事がして中に入れてもらえた。やっぱりここってアパートだよな。(まだ言うか)
小さな子供がいて片づけ下手な義妹の家らしく中はすごい事になっていた。
どんなすごいかというのはここでは黙っとこう。一応身内だしさ、私と祐子の胸の内だけにしまっておいてあげるわよ。
それとお義母さんにももちろん内緒にしておいてやるでね。ああ我ながらなんていい義姉さんなんだろう。

義妹は妊娠中で風邪を引いていた。娘も風邪気味。義弟だけ相変わらず元気である。
昨日アウトレットで買ったスノーマンの壁掛けと共に一個だけ食べてしまったシュークリームの残りをあたかも手みやげのように差し出す。
あ〜ああ〜結局持って来てしまったシュークリーム4個。3人家族なのに4個。まあ、気にするな。

しばらく話をして私たち11時の特急に乗りたいから10時50分になったら駅まで送ってよね
と有無を言わさない言い方。お願いじゃなくて命令に近かったかもしれない。ぜってーだぞって感じ。

車のところで義妹とばいばい。
「2月にまたお世話になります。よろしくお願いしまーす」
第二子出産の為来年の2月になったら実家へ帰ってくるのだ。4月が予定日なのに何故に真冬の2月に帰ってくる?3月でいいんじゃないか? とは口が裂けても言わない。なぜなら私はいい義姉さんなのだから。
「うん、風邪を早く治して大事にしてね」と私より6ヶ月先に生まれた義妹にお義姉さんらしい挨拶。
おいしい紅茶をごちそうさまね。お義姉さんお義姉さんと私もうるさいなあ。

そして義弟の運転する車に乗って駅へ向かう。やっぱり車でも結構あるんじゃんね。
ここを歩いて来たんだよ、割とあるねと言うと義弟はハハハ。なんだそのハハハってーのは?あ?
キミがちょっと頑張って早く起きて気を利かせてくれたのならそんな思いはしなかったのだよ。
ちょっとムカつく。こめかみにピキピキ。

駅へ着いたら義弟は一緒に連れてきた娘を抱き「特急電車を見に行こうねー」と車を駅前に路上駐車してスタスタと付いてくる。
電車の発車時刻までまだ間があったので私はホームで娘をだっこしている義弟と話をしている。
と、その後ろで特急指定券を買おうとしている祐子が私に聞いてきた。

「指定席は禁煙車と喫煙車があるけどどっちにする?」と。

私は思わずきつえんしゃと言おうとしたが思い止まった。
義妹はもちろん義弟も私がタバコを吸うなんてちっとも思っていないのだから。

「つ」と「ん」を間違わないように慎重に頭を回転させ頭の中でもう一度確認してから
「きんえんしゃがいい」と言った。
当たり前よねと言う顔をして義弟の方に向き直りまた話を続ける。そしたら祐子は発券機を操作しながら
「きんえんしゃでいいのね?」と確認の意味でもう一度優しく聞いてきた。げー
「で」とはなんだ「で」とは。怪しまれたらどうするんだよ。

「うん、きんえんしゃ」
ここで私は「きんえんしゃはやっぱいいわよねー」とか「きんえんしゃに決まってるでしょう?あっはっは何言ってんのよう」などと余計な説明をつけて言ってはならない場面にあった訳だ。
その後祐子は何事もなかったように禁煙車の指定席券を2枚買った。ほっ
やっぱり持つべきものは頭のよい友人だ。更に余計な事を言う事もなく素直に指定席をゲット。

11時過ぎ小田急線の特急に乗り込み姪ッコとバイバイ。
2月、新潟で待ってるからねーそれまでにお願いだからもうちっといい子になっているんだよー。

だんだん東京らしくなってくる外を眺めながらおよそ1時間後、新宿着。
乗り継ぎがなく必ず座って乗れるその電車はとても快適だった。おまけにきんえんしゃだったしぃ〜空気もクリーンだったしぃ〜 ははは

さあ、いよいよ新宿だ。降りた途端ここはもう東京なんだなあと思うような人、人、人。
人混みはいやだなー具合が悪くなるで。
駅前に出る。あれ?都庁はどっち?とガイドブックをもう一度出す。
電車の中でも確認したのにビルの位置が把握出来ず何が何だか判らない。
きっとあっち方面だねと2人の方向音痴は確信もないままgoサインを出して歩き出す。
祐子は都会暮らしは長いのだが都庁は初めてらしく今日は彼女に頼ってられないのかなあと思うととてつもなく不安になったが駅を背にしてどんどん歩き出す怖いモノ知らず2人組。

結構遠いねえ、ガイドブックで見ると割と近いと思ったんだけど。そうだね、あっここで新しいmacが展示されてるって。寄ってみる?いやいい。まずは都庁まで行こう。あれ?ここどこ?目印にしていた高いビルは一体どれなんだ?

私たちはどこをどう間違ったのか斜め左方向へしたたかに歩いてってしまったらしい。
上を見上げる。高層ビル群がたくさん林立しており上を見続けるとクラクラする。
どっち?あっち?こっち?いやそっちだろ?そうか?ええ?ああ?ホント?いやあん...

今となってはどういう風に修正し直して都庁に着いたのかはとてもとても説明が出来ないんだがそこはお願い許してくれ。

やっと着いたよ東京都庁。キミは一体どこへ行ってたんだ?
とにかくやっとこさ逢えたんだね。逢いたかったんだよホントだよ。出来ればもっと早くに。

ロビーに入って観光客らしい団体が流れる方へ付いていくと展望室へ行けるらしいエレベーターがあった。そこの時計は12時23分。
日曜でフル稼働の2台あるそのエレベーターは片方の時計が2分ずれていた。
東京の、それも都庁だぞ?そげなところはきっちり直しておかんかいっ

エレベーターに乗った。急激に高いところへ上がったので耳が痛くなった。
降りるとまあ、展望室だわな。
くもりではっきりくっきりとは見えなかったけどああここは東京なんだなって忘れかけていた事を思いださせてくれた。
この建物の窓ひとつひとつに人が居ていろんな生活をしているんだろうなと思うと不思議な感じがした。
一通り見てから階段をひとつ下りたところのトイレへ行く。
トイレは観光地だと言うのにこじんまりとしたところだった。
そしてそのフロアには排煙装置つきの喫煙所があった。ラッキー。そこで一服。

展望室に戻りおみやげ売り場の前を通るがそこにはペナントや提灯はなかった。もしかしたら東京タワーにはまだそういう時代の忘れ物的なものが売っているかもしれないなあなんて思いながらエレベーターに乗って降りる。
また耳が痛くなった。

お腹が空いてきたので都庁の下のレストラン街で即決、オムライスを食べに入る。
オーダーするとき当たり前のように「何を飲む?」と祐子に聞いたけどまずいいと言うのでどうした?と首をかしげたが夜に取っておくと言う。納得いかないが私は白ワインをグラスで頼んだ。
次にどこへ行くか相談しながら食べてじゃあ次はお台場に行こうという事になって都庁を出る。
出ると新宿駅と書いてある看板があったので来た道とは全く別の方向へ歩きだす。
そこは「歩く歩道」というものがあるトンネルのような道だった。でも休日だからかな?動いてなかった。

そのトンネルの途中でdocomoショップを見つけたので確かそこでは携帯電話を充電してもらえるはずだと思って入る。
この旅行中はずっとバイブレーターにしていたので電池がいつもより消耗が激しいのだ。電池が切れたら大変な事になっちゃう。
中に入ると係の女の子は「20分から1時間くらいかかります」と言う。げー、そんなにかかるの?
「お急ぎならご都合のよい時間まで充電させていただきますのでよろしい時にいらしてください」
ああ、なるほどその手があったのね。じゃあお願いと言い置いて店を出る。

コーヒーでも飲んで待ってようかとそこから新宿駅に向かって少し歩いたけどなさそうだったので諦めて本屋さんに入って時間を潰す。時間が余ったらフットケアかハンドケアのお店でゆっくりしたいわねと立ち読み。
携帯は30分で取りに行った。先を急ぐのでね、ありがと。

そして駅へ向かう。そしたらだ、私たちがさっきコーヒー屋さんを探してないねと言って戻ったすぐ先にドトールがあった。美観を損ねるからか、お店の看板は通路にははみ出さないようになっているらしいってのが見逃した理由。

少し歩くとトンネルが開けた。駅に出た。なあんだ都庁と新宿駅ってすんげー近いんじゃん。
一体あの行きのあの行程は何だったんだというんだ?私たちはさまよえるシティーウォーカーか?
2人で黙った。それぞれの心の中で悔しい気持ちと情けない気持ちがここで充満したからだと思う。

新宿から新橋までJR線、そこからゆりかもめに乗って台場へ。
フジテレビをさらっと眺めてその向かいのaqua city(ファッションビル)でちょっと遊ぶ。
そして今日の夕方一緒に飲むことになっているS氏(ホントはHさんなのだがH氏だとやらしいので)にメール。
最初、有楽町辺りのバーに行こうと言ってたけど「今はお台場にいるんだけど今どこ?時間は予定通り?どこまで行けばいい?」と聞く。
あわよくばここまで迎えに来てもらおうというエッチな算段だ。どあってさー歩き疲れたんですもの。
ところが彼は4時くらいには仕事が終わって逢えるって言ってたのにこれが長引いちまったんだな運悪く。
結局S氏とは逢えない事に決定。が、明日の帰る前に少し逢おうという事になった。

私は今日泊めて貰う事になっている啓子のところには夜の8時くらいに行くと前に伝えておいた。
啓子は「もっと早くおいでよ」と言ってくれたのだがS氏と逢う時間を考えるとそれがギリギリだったのだ。
そうしてS氏と逢わない事になったので私はもういつでも祐子を解放してあげようと思えばあげれる立場になってしまった。
祐子よ、お疲れさま。引っ張り回したがもう帰っていいよ。なあんてな。

彼女に聞いてみた。「これこれこうなんだけどどうする?」
そしたら「じゃあ軽く飲んでから別れましょう」と提案。
良いこと言うじゃねーか。飲む?うん。私はすぐに賛成した。

aqua cityにはいろんなレストランがあったけどやっぱり夜景の見えるところでビールが美味しいところがいいわ。
また意見が合った。
軽い感じのビアレストランへ入る。2人ですと言うと「おタバコはお吸いになられますか?」と聞かれたので即答で「はい」と答える。
そして案内された席は壁際の奥まった、それも外がよく見えないところだった。
「あっちの席は?」と大きな窓側の空いている席を指さして言うと「あそこは禁煙席なんです」
私はすぐに夜景は諦めようとした。昨日もたくさん見たしい〜ちょっと遠いけど見えるこたあ見えるじゃんね。
そしたら祐子が一言「我慢しなさい」 
え〜ん。でもまあいっか。と、私は今日二回目の禁煙席に座る。

そして通された席はうわ〜んうお〜ん
レインボーブリッジがとてもよく見えてタバコなんかを我慢するに値してなおかつお釣りがくる程だった。
夕方から夜になり始める頃の、なんとも言えない落ち着いた雰囲気ってのかな?思わずほお〜とため息。
今回の旅行は夜景がどこもキレイでよかったよ。

中ジョッキのビールを頼もうとするついでにメニューにも目を落とす。
啓子が夕ご飯は食べて来ないでねと言ったので軽くつまめるものは何かないかな?と2人で仲良くのぞく。
そしたらまぐろとアボカドのターター なぬ?もしかしてこれは昨日ドックヤードのビアレストランで感激して涙したアレと同じものか?名前はちと違うようだがまぐろとアボカドとくればそうだろう。
説明を読むとまぐろとアボカドに柚子と西京味噌のソースを添えてとある。よしそれだ、それいこう。絶対いこう。
ビールが運ばれて来るのは早かったがターターはとても遅かった。
いや、早く食べたかったから遅く感じただけなのかもしれないけどホント、待つって辛いものなのねえ。

きたっ。えろううんまかった。柚子と西京味噌のソースは材料に混ざっているのではなく周りにかけられているものでそれを少しすくって一緒に食べると柚子のよい香りがした。
ただですね、、、少なかったんですよ。昨日の半分くらいしかなかったのよね。まあ、お店によっていろいろありますわな。

そしてビールをもう一杯頼んだ頃、案の定ターターは無くなった。喰っちまったからに他ならないのだが物足りなさを感じた私たちはショウロンポーを頼んだ。また出てくるのが遅い。しかも小さい。何だこの店は?と思ったが目的はビールだった為、無理矢理その思いは吹っ切った。ぴゅー

食べ終わって少し早いけど駅へ向かう。
お世話になったねー。いやいや私も久しぶりに遊びに出られて楽しかったよ。そうお?先生も大変だね。そうでもないけどね、これから年末は殺人的に忙しくなるよ。
などと話ながらゆっくり歩く。さっきレストランから見えたレインボーブリッジを見ながら、肩に食い込む荷物を担ぎながら、これから1人になる不安を抱えながら。

台場駅で祐子はゆりかもめで私とは反対方向のJR新橋駅に戻り横浜方面へ帰る。
私はというと今夜泊めてもらう啓子の家がある駅まで行くには祐子とここで別れなければならない。
だが、ゆりかもめでJR新木場まで行けると思っていたのにそれが大間違いである事にこの時初めて気がついた。
どどどどどうしよう。乗り換えが2回もあるじゃんよ。
私も一度は祐子と一緒に新橋まで行ってJRで行こうかとも思った。そしたら乗り換えは1回じゃんね。
いや待てよ、よく考えたら東京駅で京葉線に乗り換えなきゃならんから乗り換え回数は2回でぎゃあーっ同じじゃねーか。
だからだから1人で頑張る事にした。

そしてこれが最後に祐子が撮ってくれた写真。後ろ姿に不安がひしひしでしょ?ひとりになるんかよ〜って。

しかしこんなところを撮っていたとはなんなんじゃ

祐子にもう一度お礼を言って私の方が先に電車に乗りバイバイってした。心配そうな祐子の顔に引きつった笑顔を返す私。

さてここからが問題です。果たして私は今夜、暖かいお布団で眠れるのでしょうか?ええ〜い、へなちょこを返上してやるー。

有明行きのゆりかもめはとても空いていた。終点まで乗ればいいんだから落ち着いたもの。のはずだが内心ドキドキ。
外には大きな観覧車がキレイにまあるく光っていた。所々建物にもイルミネーションがされてあって美しかった。
それらが私を落ち着かせ1人の寂しさを忘れさせ一時心を穏やかにさせた。

有明駅に着いていどー。りんかい線の国際展示場正門駅から新木場へ。乗り換え成功。か〜んたんじゃ〜ん。
電車に乗っている間に啓子へ何時頃に着くかメールをした。駅まで迎えに来てくれる事になっていたからだ。

新木場でホームに上がると電車待ちの人が少しいた。あ、喫煙所みっけ。一服。
電車が来た。快速には乗っちゃいけないよ、私んとこには止まらないからねと言われていたので場内アナウンスを聞いて
あ、これは乗ってはいけない電車なんだなとまるで保育園児のように言い付けを守る。
次の電車はなかなか来そうになかった。やっと来た。よいしょっとして乗り込むと
「この電車は快速列車です」
着く前にもっと早く場内アナウンスで言わんかい。急いで降りる。同じような人が数人いた。バツが悪い。
そして次の電車もしばらく来ないだろうなと思いもう一本タバコに火を付けたところ、もうすぐ各駅列車が来るとアナウンス。おいおい見込み違いかよ。ハズレだらけだなもう。

やっと乗って啓子が待っているだろう駅へ降りる。ホームを歩きながら携帯を見ると啓子からメールが来ていた。
「着いたか?」おう、2本見送ったぜ。
そのメールには返さず外に出る。1分くらい待って啓子登場。車でお迎えだ。やったあーもう肩が痛くてまいったよと自分に文句と安心感からなかば半べそ状態。

いらっしゃーいと言って助手席を勧めてくれた。どかっ ホントにどかって感じに座る。音がしたんではないだろうかってくらいどっかり座った。疲れたよーう。
久しぶり、お世話になるねと挨拶。啓子は相変わらず表情豊かに疲れた旅人を優しく迎えてくれた。

途中で我が家は飲まないからビールがないんだよと言うのでスーパーに寄ってもらいそんなに飲まないとは思うけど500mlを取りあえず3本とチーズとその他のつまみとお菓子を少し買ってマンション到着。
すげえでけえマンション群。はああ〜でも今日は上を見上げるのはもう疲れただよ。

玄関に入ると真っ直ぐの先にはLDKらしき部屋が見えてそこには4年生の男の子と幼稚園の女の子が顔を覗かせた。
こんばんはー、お世話になりますーと靴を脱いで上がり真っ直ぐ進もうとした私の目に飛び込んで来たのは玄関入ってすぐ左の部屋でテレビを見ている啓子のご主人だった。心の中でぎゃあ〜と叫んでしまった。
さっきまでの気ままな女2人行動に慣れ切っていた私には忘れていた事があった。ここはファミリームード一杯の家だって事を。頭を切り換えなければぶるんぶるん。
どうもすみません、今日はお邪魔しますー。お忙しい所にホントにすみません。あのーホントにいやああのすみません。
何だか訳のわからない挨拶になってしまった。失敗その1。

そしてリビングに進み子供達に近づいてからあらためて挨拶。今日は泊めてもらう事になりました。どうぞよろしく。と言うと男の子の方がきちんと挨拶を返してくれた。躾が行き届いている。
女の子の方は目を丸くしていたようだ。
きっとこの人なに?って思ったんだろうな。かわいそうに先程までの平和な我が家に何か起こりそうな予感がーとでも思ったに違いない。

ダイニングテーブルの椅子を勧められて座った。テレビが一番よく見える席なのでたぶん普段はご主人の指定席なのだろう。
そのご主人はしばらく先程の部屋から出てくる様子はない。たぶんにリビングにあるテレビを子供達に提供してあげているからだろうと思った。

啓子はね、よくしゃべるんだほんっとに。
がしかし、季節の変わり目には時々そうなるんだよねと言って声が思うように出ない事を何度も何度も説明する。
わかったって、だからそんなにしゃべんなくていいよ。いいからちょっと黙ってなさい。
私の問いにうんとかすんとか言ってくれたらそれでいいのにいやまあ全くよくしゃべるわい。
私は子供達に聞いてみた。お母さんはいつもこんなによくしゃべるの?と。
そしたらとてもかわいい事に2人同時にこっくんと頷いた。私は思わず吹き出してしまった。

啓子は相も変わらずしゃべり続けながら手を動かしながら夕食を作ってくれていた。
そんな啓子には悪いが私は喉が乾いたよ。ビールを飲んでいいかな?とついぞ言ってしまった。
この家の大人は2人ともお酒を飲まないらしい。いや、子供ももちろん飲まないのだが。
どうぞと言われプシュッと開けてグラスに注ぐ。おいしい。やっと落ち着いてくる。
しかしまだ私も啓子家族もこの状況に慣れてはいない。
私は啓子と子供達とたくさん話しながらリッツにチーズを塗ってあげる役をしていた。

そしてビールを半分くらい飲んだ頃、おもむろにご主人が向こうの部屋から出て来られた。
いやー、私1人で勝手にビールなんか飲んでくつろいでしまってたよ。うわあっとたじろぐ。失敗その2。

啓子のご主人とは彼らの結婚式で拝見した以来だから14〜5年ぶりだろうか。
啓子より6つ年上の彼は相変わらずいい男だった。
なんと言うかなあ、人柄と仕事が出来る男の顔っていうのかなあ
渋すぎもせず無理に若ぶっている訳でもなくいい感じに大人してるよなって感じってのかな。
って、おまえは彼の何なんだその言い方は。

それにしても夫婦と言うもんはバランスがよく取れているもんだなと思った。
啓子のご主人は割とおとなし目であるからしてそう思わずにはいられなかったのだが。

ご主人はビールが苦手だと言うので無理には勧めなかったけど啓子が少し相手をしてあげたらと言ってご主人のグラスを持ってくる。
私は自分の飲みかけのビールをどうぞと言って注ぐ。
失礼なヤツだなあと自分でもそう思ったが仕方ない。もう勢いで行くしか道はないのだ私には。
もういいですとグラスの底からほんの10cmほどでストップをくらう。
そして不作法にも無口な彼に話しかける私。イヤだっただろうなあ〜

ビールの缶が空になった。もう1本飲む。あーあ、2本も飲んでしまったよ。
私が900cc、ご主人が100ccってとこかしらね。

そうこうしていると夕ご飯がどかどかと運ばれてきた。すまんねえと何もしないで座っているだけの私はちと恐縮。
大根とほたてのサラダ、お昼に作っておいたであろうよく煮込まれたチキンのトマトソース煮、
あー、あと何だったっけな?すまん啓子、忘れたよ。でもどれもこれも美味しかったよ。

食べている間も子供達と学校の事とかどんな遊びをしているかとか夜は何時に寝るとか塾へ行っている事とか体操教室の事とかもう口を閉じている暇はないくらいに話をし続けた。
その間中子供達は途中で席を立つでもなくテレビに夢中になって箸が止まるでもなくホントに行儀良く座って突然やって来たと思ったらビールを飲んでくつろいでいるママの変な友だちの相手をしてくれていた。

啓子の子供達は何かを聞けば必ず答えを返してくれる。
当たり前の事が出来ない今の子供が多い中都会の子は結構ドライなんだろうなと思っていた私は心中驚いたしそれと同時に啓子とご主人の家族への想いが感じられる、そんな子供達だった。
おかげでとても楽しい夕食がいただけた。

男の子の方はご多分にもれず塾で忙しいらしい。
私の家では塾の「じ」の字はおろかその前の「し」という字もない環境。だもんで私は塾という字が書けない。
カレンダーに書く時も学校関係の予定では「授業参観」くらいは漢字で書くが「懇親会」などは「こんしん会」だ。
へたすると「飲み会」なんて書いている始末。
話を戻そう。

そんな時啓子はというと喉の調子が悪いのに人の「あんまり話しなくていいから」という心配なんか全く聞きやしねえ。
次から次へとしゃべってしゃべってなおもしゃべり続ける。熱でも出たらどうすんだよってくらい私はずっとハラハラしていた。

9時を過ぎていただろうか、夕食も終わり男の子がお風呂掃除をして湯を張る。えらいね。
私は調子に乗ってビールをもう1本開ける。
あらまあ結局持ってきたビールをみいーんな自分で飲んじゃったよ。
まさかねとは思ったけどびっくりしたのは実は私自身でそれだけたくさん話をして喉が乾いたんだろうな。という事にしておこう。

それぞれお風呂に入ったり寝る準備をしたりして明日は月曜日で学校がある男の子は一足先に寝た。
何時頃だっただろう10時は過ぎていただろうな。いつも宵っ張りなんだそうだけど明日は月曜日。
付き合わせて悪かったね。おやすみ。
女の子の方は明日はたまたまお休みであったのでパパと戯れる。どこの家でも父親というのは娘が大好きだし娘もそんなパパを愛しているものらしい。

女の子がパパと一緒に奥の部屋で寝る体勢に入る。
いつもパパママと3人で寝ているリビング脇の和室は今夜私が寝かせてもらう事になっちゃったからね。ごめんね。

そしてこの家の夜はまだまだ続くらしい雰囲気がひゅるるる〜と漂う。
啓子はいつも子供達が寝てからが自分の時間だと言い夜な夜な1時2時まで起きているんだとさ。
もしかして、もしかしなくても今夜もそう?かしら?もついでに付けようかしら。
うーん私はと言えばだねあまり疲れてはいないけどそんなに長く起きていられる自信はないのだにゃー。

落ちてしまう前にお風呂をと思っていただいたのが12時頃だっただろうか。
この家のペースが我が家とあまりにも違うので感覚が麻痺してしまっている。何時に風呂だって?
12時と言えば我が家ではおおむねぐっすり寝ている時間であって決して風呂など入っている時間ではないのであーる。

しかし何の心配もいらず自分の管理だけ出来ていればいいこの状況を楽しんでいる自分がいた。
一日は誰でも24時間なのだ。昼間に自由になる時間がなければ他で満足出来る時間を確保する事が大切になってくる。
啓子は日中とても精力的にあっちこっちと動き回っているらしいから夜のそんな1人の時間が明日の元気へと繋がっているのだろう。

ご主人も寝てしまったらしい。啓子もお風呂へ入った。上がって来た。
そんで話は続く。があ〜まだ止まらないんかい。

1時過ぎに布団に入る。やっと口が閉じれた。
私はすぐさまに眠りにつけた。

ってな感じで11/17 今日も無事に楽しく終了


18日へ行く

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