地域と地球をつなぐ学びの広場主宰 小貫 仁 http://www.ne.jp/asahi/onuki/hiroba/ 1 はじめに (ポリネシア文化とアロハ) ポリネシアに関心がある。ウクレレと言えばハワイアン音楽だから、一般にはハワイを思い浮かべるだろうが、別にハワイに限らない。 「アロハ」の意味をご存知だろうか。「アロ」とは「分け合う」こと、「ハ」は呼吸を意味する。つまり、「アロハ」は「生命の息づかいを分かち合う」こと。ポリネシア精神を代表する言葉だと思う。 画家のゴーギャンは、パリでの息の詰まる生活を捨て、彼の言う「地上の天国」タヒチに移り住んだ。彼は、自然と共に「アロハ」の精神に生きる人びとに深く共鳴したに違いない。その気持ち、私にもわかるような気がするのである。 そんなわけで、その音楽楽器としてのウクレレに関心を持った。元々は、ポルトガルから伝来したものと聞くが、私はウクレレ音楽の背景にポリネシア文化を感じる。それを感じることができる音楽ほど好き。そういう「ウクレレ大好き人間」。 2 オオタサンのCDを聴く オオタサン(Herb Ohta) はウクレレ演奏の名人。ウクレレ愛好者の誰もが 「ウクレレの神様」 と言う。知らない人は 「ウクレレ楽園」(CD) あたりからどうぞ。 オオタサンの演奏を聴くと、ウクレレが伴奏楽器にとどまらず、ソロ演奏のメロディ楽器であることがよくわかる。Low-G といって4弦を1オクターブ低く改造したウクレレで弾いている。基本的に親指だけの演奏なのだが、1本のウクレレが2本にも3本にも聞こえる。 私は、もうひとつの小さい楽器=ハーモニカも好きだ。この楽器では 「分散和音奏法」 によって、1本のハーモニカで2本にも3本にも聴かせることができる。こういう小さい楽器のもつ奥深さはとても面白い。(※1) とにもかくにも、私は、彼がその卓越した演奏技法でハワイのメロディを奏でるだけで参ってしまう。ハワイ版ポリネシア精神を味わいたいという気持ちで聴いている。さっそく購入したのも、ププケア製ハーブオオタモデル。オオタサン愛用のマーチン製のコピーだが、当面はこれで満足。オオタサンは名前の通り日系だが、その人柄は純朴でやさしい。私は彼のなかにも、ハワイ版ポリネシア精神を見るのである。 ※1 1994.4-2000.3 「全日本ハーモニカ連盟」の内田義三先生に師事。 (バスハーモニカのワンポイントレッスンは鶴田恒弘先生) 3 渡辺直則先生に師事する そんな訳で、2000年秋より、ウクレレを習い始めた。先生は 『ウクレレ弾こうよ』(大泉書店) の著者でもある渡辺直則先生。 この先生がまたすごい。私は日本一のインストラクターだと信じている。著書を読んでいただけばわかるが、教え方は極めて理論的だ。ウクレレのもつ奥の深さを受講のたびに感ずる。(※2) 大切なのは、コードを習い始める基礎のうちから、将来のソロに備えた指使いを身につけることだそうだ。例えば、牧伸二の「やんなっちゃった節」をハイコードの全弦セーハ(1本の指で4つの弦を押さえる)で伴奏するとしよう。ところがこの奏法は便宜上のもの。「C」も「A7]も基本形は全弦セーハではない。 コードは、メジャー、マイナー、セブンスなどに各々4つのポジションがある。そのこととコード進行の規則性がやっとわかってきた。わかってきたが覚えられない。だから応用も効かない。まだまだ初心者の域。 ※2 都心(池袋)まで、平日の勤務終了後に出かけることが難しくなって通学を断念。 現在は、地元で 「埼玉ハワイアンクラブ」の江口猛敏(たけと)先生と熊谷広満先生に学んでいる。練習では伴奏にソロも加わる。実践的で楽しい。 4 ウクレレを通してポリネシアの世界に ゆったりと自然にとけ込んでいるハワイ音楽を、自らの指で弾くことで、ポリネシア精神を体現する。そんなことを夢みている。 ポリネシア文化を書いた本の中で 「第六感」 ならぬ 「第七感」 という用語に出会った。「満足感を発達させる能力」 だという。人生と固く結びつく力、ほんのちょっとした喜びでも味わうことのできる能力・・・。 いつも幸せを追い求めながら得られぬ日々。必死に求めても得られないことに苛立っているのが現代人の生き方ではないだろうか。そうした状況が、現代社会の様々な問題の根本原因にあるような気がする。 「第七感の人」・・・そんな人に私はなれるだろうか? <付録> ハワイの表と裏 (2004年2月8日の掲示板より) ハワイの表と裏と言えば、こんな話題を。 山中速人著 『ハワイ』 (岩波新書、1993)、矢口祐人著 『ハワイの歴史と文化』 (中公新書、2002)という二冊の本をお薦めします。ハワイに関して、私のバイブルのような本です。二冊とも、ハワイの観光ガイドブックに書かれている 「太平洋の楽園」 というイメージに対して、もう一つの真実を書いたものです。私にとっては、それこそが本当の真実であり、人間が学びとるべきものを豊富に含んでいるように思えます。 山中氏は言います。ハワイは古来 「ハヴァイイ」 である。英語でせっかく Hawaii と綴りながら 「ハワイ」 と呼ぶのはなぜか?そこには創られた太平洋楽園幻想がある。ハワイを見るときには、色々な視点で複眼的に見たい。そして、そこでは、ハワイの土地っ子(カママイナ)の視点も忘れるわけにはいかない。そして、より深いハワイ理解によって、ハワイの多種多様な人々による民族共存の思想や、先住の人々が守ってきた地球にやさしい生き方など、私たちはより多くのものを学びとることができる、と。 矢口氏はその書を映画 『ピクチャーブライド』(1994) の解説から始めています。まさに複眼的視点です。「ピクチャーブライド(写真花嫁)」 とはかつてハワイに移民した日本の女性たちのこと。この映画は歴史的事実をもとに、20世紀初頭のサトウキビ労働者の生活の有様を日本との深いつながりで描いています。歴史的にみれば、軍事基地ハワイが観光王国ハワイに変わったのは、つい最近、20世紀後半でした。そう言えば、あのワイキキは 「涌き出る水」 という意味であり、水の豊かな湿地帯で、タロイモ水田だったのですね。 ハワイ理解についてまとめてみましょう。私がハワイから学ぶものを敢えてまとめれば、次の三つです。 (1) ハヴァイイ先住の人々から伝わるアロハの精神とエコロジーな生き方。 −−ハワイ併合による先住民問題も忘れることはできません。 (2) 多民族共存社会の平和的なあり方。 −−日本の異文化理解と国際化の鏡でもあります。 (3) 近代を乗り超えるあり方への視点。 −−環境破壊など観光開発に対する見直しの視点でもあります。 ところで、なぜ突然ハワイの話? その答えはホームページの 「こだわりのウクレレ」 を読んで下さい。(~_~) とにかく、私は色々な意味でハワイ(ハヴァイイ) が好きなのですね。 |