学 校 教 育 で の 実 践 事 例


『 開発教育実践マニュアル わくわく開発教育 参加型学習へのヒント 』
( 開発教育協議会、1999) より


                           開発教育協会 小貫 仁
                           地域と地球をつなぐ学びの広場主宰
                           http://www.ne.jp/asahi/onuki/hiroba/


学校における開発教育実践上の視点

@国際理解教育として
 学校での国際分野の学習は「国際理解教育」として位置づけられます。開発教育の考える「国際理解」とは、異文化理解を基礎として、世界の諸課題の理解に取り組む総合的な教育分野と言えるでしょう。
 そこにおいて、途上国の生活や文化の理解を基礎として人びとが抱えている開発問題について理解し、さらに、世界の貧困及び格差の現実に迫る学習が開発教育の焦点です。

A国際協力のための教育として
 世界の課題を自分のものとして理解し、それに取り組もうとする「国際協力のための教育」としての開発教育は、学習者自身が自分の実生活に問いかけ、自ら考えるなかで到達した「気づき」を真の理解と考えます。そのために、さまざまな参加型の方法を工夫しています。
 学校で参加型の授業を考えるとき、具体的には次の3つのあり方が想定できます。

 1)対話方式の講義(視聴覚教材の活用含む)
 2)さまざまな参加型教材での授業
 3)調べ学習〜レポート学習〜発表学習
  実践では、1)と2)をセットにし、3)を組み合わせるのが最も一般的です。

B学校での学習内容全体との重なり
 実践上で重視すべきもうひとつの視点は、「開発をめぐるさまざまな問題を理解し、望ましい開発のあり方を考える」開発教育は学校での学習内容全体と重なってもいるということです。「開発」とは人間が十全に自己を発揮できることと結びついている概念であり、特に社会科などでは、身近な地域や日本社会の問題を理解し、人権・平和・環境のための開発を考えることを当然に含みます。
 ただし、身近な問題を理解しそのあり方を考えることが、しくみや構造の理解にまで至らなければ、世界のしくみや構造を理解しようとする開発教育本来の地球規模の学習に結びつきません。小学校から大学までの「共感的な理解から理論的な認識へ」という段階はあるものの、そうした学習は小学校でも可能と考えられます。

高校「現代社会」での構成の一例

 以上の3点を踏まえ、総合的学習を意識した、高校「現代社会」での構成の一例をご紹介します。

 1学期>世界の課題紹介(オリエンテーション)→個人による調べ学習
 2学期>地域及び国内の課題→グループによるテーマ学習〜発表
 3学期>世界の課題→個人によるテーマ学習(修了レポート)〜発表

プログラム例

 ここに紹介するのは、4〜5月の導入期に「世界を知ろう」というテーマで世界の諸課題を紹介するためのプログラムです。参加型手法を活用した授業では、せめて90分ほしいのですが、現実の授業時間は45〜50分ですから、参加型教材での学習とそれをより深めるための学習とを併せて1セットとする必要があります。
 5テーマ/10セットですが、各テーマを2段階に分けています。出典のあるものは敢えてオリジナル版を提示しました。実践に当たっては、一方の教材のみを行う、あるいは、二つを組み合わせて独自の教材を作成するなど、発達段階や配当時間に応じて任意に工夫することも可能です。

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1 世界のつながり 
 @教室の中の物のふるさと(『WORLD STUDIES 』)                <調査>
  ねらい〕身近なものを通して世界のつながりを理解する
  内 容〕教室の製品の原材料がどこから来るかを調べる
 A世界からやってくる私たちの食べ物(「The WORLD in a Supermarket Bag」)<調査>
 ねらい〕食べ物を通して世界のつながりを知り、世界の不公正な仕組みにも気づく
  内 容〕食品の原産国を調べ、値段についてワークシートで考察する

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2 世界の貧困・格差 
 @世界の人口と豊かさ(『WORLD STUDIES 』)         <シミュレーション>
  ねらい〕人口と富の世界分布について全体的に把握する
  内 容〕人口とお金のシールを白地図に貼って分布を調べる 
 A分け前はどれくらい?(『フード.ファースト.カリキュラム』)       <シミュレーション>
  ねらい〕飢えの原因として、分配の不平等に気づく 
  内 容〕おやつを用意して、世界の資源配分に従って分けてみる 

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3 世界の人権問題
 @子どもの権利(『ヒューマン・ライツ』)             <ブレインストーミング>
  ねらい〕物的あるいは表面的な権利意識を超えて人権を考えられるようになる 
  内 容〕欲しい権利を出し合い「子どもの権利宣言」などと対比する 
 A権利についての展望(『ヒューマン・ライツ』)           <ワークシート作業>
  ねらい〕世界の人権の状況を知り、未来を展望する
  内 容〕権利の優先性に関する質問紙から世界の人権問題について考察する

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4 世界の環境問題
 @木のない世界(『地球市民教育のすすめ方』)                 <分類>
  ねらい〕木の大切さ、森林破壊の有害な影響を理解する 
  内 容〕説明シートにより、カードを分類する 
 A数の問題?(『地球のみかた』)                  <ワークシート作業>
  ねらい〕人口とエネルギー消費の不平等な関係について理解する
  内 容〕データを読み取り、それに関して討議する

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5 世界の平和問題
 @平和とは何か、対立とは何か(『開発のための教育』)    <フォトランゲージ>
  ねらい〕対立は物理的暴力より見えにくいさまざまな形態があることを理解する 
  内 容〕「平和と対立の絵」を平和と対立とに分類し、意見を交換する
 A平和とは何か(埼玉県『「国際関係」指導資料』)           <ランキング>
  ねらい〕平和とは、紛争のない状態だけではないことを理解する 
  内 容〕平和の概念について、ダイヤモンド型に順位づけして定義する

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