1999年ヨーロッパ鉄道旅行記・4日目

3月7日


ヴォス教会
▲ヴォス教会
 朝,6時頃起床する.昨夜はぐっすり眠れたようである.廊下の窓からは,ヴォス教会が朝焼けを浴びて美しく見える.さて,いつものごとくホテルの食堂で朝食である.食堂の窓からは凍ったヴォス湖が見える.食事の方はオスロやベルゲンのホテルのほど料理の種類は無かったが,バイキング形式で満足である.昼食や夕食がいいかげん(カロリーメイト,ファーストフード等)になりつつあるので,ホテルの朝食は重要なエネルギー源となっている.皆,お腹いっぱい食べて大満足である.出発準備が整い,会計を済ませる.ノルウェー出国が近づいてきているため,ノルウェーの現金をなるべく残さないよう,KR山氏は現金で,K口氏と私はクレジットカードで宿泊費を払った.KR山氏には私のノルウェー現金を少々貸し,ドイツマルクもしくは日本円で返してもらうこととした.ホテルのお姉さんは笑顔で我々を見送ってくれた.
 ホテルを出発し,駅へ向かうが,KR山氏がホテルの写真を撮るのを忘れたとのことで,再びホテル前へ戻り写真を撮る.駅にはどこにそんなに人がいたのかというほど列車を待つ人がいる.皆大きなカバンを抱えた旅行者である.駅の留置線にはなぜかいかつい顔をしたエアポート特急の車両が停車している.おそらくスキー用の臨時列車なのであろう.そうこうしていると“ほんまもん”オスロ行き「ベルゲン急行」がベルゲン方から現れ,我々は指定された車両に乗り込む.今まで乗ってきた『ばったもんベルゲン急行』と違い,最新車両で内部もきれいであった.最初に感じたのがヘッドレストが非常にうまく設計されていて,気持ちよかったことだ.通常ヘッドレストは後頭部の部分にあるが,このベルゲン急行用新型客車では,首の部分にありそれが柔らかいため,ちょうど肩と頭の間にすっぽりはさまり非常に気持ちが良く,眠りやすい構造となっている.ぜひ日本の電車でも見習ってもらいたい構造である.私個人的にはどうも日本の電車のヘッドレストは合わず,眠りにくいと思っている.さて,Myrdalまでは,一昨日,昨日と3日連続の乗車であり,飽きてきた.K口氏はGudvangenで買った絵はがきに,手紙を書いている.昨日夜時間をかけて書いた私と違い,長い長い移動時間を利用するあたりはさすがK口氏である.KR山氏は相席になった,地元のおばちゃんと「どこから来たの?」という会話から始まり,かなり盛り上がっているようである.おばちゃんはお国自慢とかをしているようで,ノールカップの白夜の話とかをされているようだった.車内販売が来たので,私はサンドイッチを注文したが,「●×★♭#£ΥΞЖ」と言われ何を言っているのか全く理解できなかったので,「Perdon?」と聞き返してみると,美人の車販のおねえさんは笑いながら,「Thirty-five.」と言ってくれた.どうやら私が旅行者だということを忘れていて,ノルウェー語で値段を言ってしまっていたようだった.オスロまでの道のりは長く,車窓は美しいものの飽きがきていた.私とK口氏は交代でKR山氏と席を替わり,おばちゃんとの会話を楽しみ退屈しのぎをした.おばちゃんとの会話は英会話の練習も兼ねてである.北欧の方は皆,英語が流暢でかつネイティブの方のように早口でないため非常に聞き取りやすく,会話をしやすい.KR山氏は結局,おばちゃんと一緒に写真を撮り,さらに住所も聞き出していたようだ(帰国後1往復のみ手紙のやりとりをしたそうだ)Drammenで列車を乗り換えるというおばちゃんと別れ,オスロまであとわずかとなった.3人でオスロでに着いてからの予定を話し合ったが,国立美術館にあの有名なムンクの『叫び』があるようなので,あまり美術に興味ない私であるがぜひ見たいのでまずそこへ行くということが決まった.地球の歩き方によると国立美術館の開館時間は日曜日は15時までで,この列車がオスロ中央駅に着くのが14:12であることを考えるとかなり急いで行かないといけないようだがとりあえず向かうことにした.列車は定刻にオスロ中央駅に到着した.
 駅を出て急いで国立美術館へ向かう.重い重い荷物をコインロッカーへ預ければ良かったのだが,預けずにすべて持っていってしまった.美術館には歩いて10分ほどで到着した.荷物は鍵がかかる部屋に置かしてもらった.日本の美術館は入場料がやたらと高いが,ここノルウェー国立美術館はなんと無料である.それで中身は大したこと無いかと思えばそんなことは無い.中は非常に広く迷子になってしまいそうである.しかも展示品は美術の教科書で見たことのある絵画が多数あり,私のようなものでも知っている絵が多数あった.そして肝心のムンクの部屋にたどり着いたが,あの『叫び』がどこにも無い.ひょっとしたらもっと別の部屋に特別に展示しているのかと思いながら先へ進んで行くがどこにも見あたらない.地球の歩き方にはここ国立美術館にムンクの『叫び』があると書かれているが,ひょっとしたら近くのムンク美術館にあるのではないかという疑いを感じるようになってきた.とうとう出口へ来てしまった.出口付近に土産物屋があり,そこにはムンクの『叫び』をデザインした絵はがきが売っていたので,係員にその絵はがきを指さして「あの絵はどこで見られるんだ?」と問い合わせてみた.そうするとその係員は「通常はここにあるんだ,通常は.不運にも今はSwitzerlandだ.」みたいなことを英語で答えた.どうやら現在スイスへ貸し出し中でここにはないとのことみたいだ.残念!しかしこの国立美術館は見応えのある絵画が多数ありしかもそれを無料で公開してくれており良かった.結局閉館時間は16時のようでした...
オスロ王宮
▲オスロ王宮
 国立美術館を出ると外はだった.オスロでは雨は珍しいのか傘を持っている人はあまりいず,皆ずぶ濡れである.1年のうち370日は雨が降ると言われているベルゲンでは全く雨に遭わなかったのに,ここオスロで雨に降られるとは.我々は傘を持っていたが荷物が多く歩くのが大変である.しかも雪解けと重なり道路はびちゃびちゃである.雨であるがとりあえず歩いて見て回れる範囲は見ようということで歩き出した.オスロ大学(パルテノン神殿みたいな形をしていた),オスロ王宮(衛兵が歩いていた),オスロ市庁舎,オスロ大聖堂と外から見られる範囲で見て廻る.が,雨と道がぬかるんでいて皆疲れてしまって,最後の方にはとにかく早く駅へ戻りたいと思うようになってきてしまった.K口氏はスチュワーデスバッグがぬかるんだ道でうまく転がらず難儀しており,しまいには背負えるような構造に切り替えた.オスロ中央駅に戻ってきたときは夕方になっていたが,今夜の夜行列車まではまだまだ時間が余っていた.K口氏は変な彫刻が立ち並ぶフログネル公園へ行きたそうな顔をしていたので,荷物は全部預けて市電か地下鉄に乗って行こうかと話し合ったが,やっぱり雨中の市内散策で疲れきってしんどいということで行くのをやめた.駅のベンチに座り疲れを癒す.
 夕食は駅周辺の店を探したが,結局駅構内のマクドナルド.バリューセットは55NOKと日本より高めだ.オレンジジュースは日本よりうまい(氷が入っていないため薄まっていないからか).食事が終わると駅構内のスーパーで余ったノルウェークローネを消費するため,お菓子などを購入した.
 それでも夜行列車発車までは時間がまだまだある.はじめてチップ式(1回5NOK)の駅トイレにも行った.さて昨日のホテルで書いた手紙を投函したかったが,日曜日で郵便局は閉まっており切手を入手できずじまいで来てしまった.せっかくのノルウェーの絵はがきゆえやはりノルウェーから出したかったので,駅のキオスクで切手を売っていないか聞いてみた.そうすると扱っているとのことであった.地球の歩き方には日本まで航空便で5.5NOKと書かれていたので,「5.5NOK切手3枚下さい」というと「どこまでの郵便?」と聞いてきたので「Airmail, JAPAN.」と答えたところ「5.5NOKではなく7NOKだ.」ということだったので7NOK切手3枚を購入した.切手を他の2人K口氏とKR山氏に見せびらかしたところ,どこで手に入れたんだと聞いてきたので,キオスクで売っていたことを教えてあげた.こうして3人とも切手を入手でき,ノルウェーからの手紙をポストに投函した.
 乗車ホームへ様子を見に行くと我々の乗るKøbenhavn H行き夜行列車はすでに入線していたため,車内で乗って待つことにする.クシェットは6人部屋で上段,中段,下段と3段構造となっており,我々は上段と中段の片方だった.まもなくして同室の残り3人が現れたが,女性を含む若い3人組であった.どうやら男女の区別無く切符を発売しているようだ.しばらくして女性の太った車掌が現れ,切符を見せるように言ってきたので見せ,さらにパスポートも見せるように要求してきた.しかし簡単なチェックだけして切符,パスポートとも返却された(国際列車はパスポートを車掌に預けて入国手続きを代行してくれると聞いていたが...).同室の3人は最初は賑やかであったが,下着姿になったかと思えば,さっさと寝る体勢に入り静まり返った.我々と挨拶も交わすことなく...そして深夜のとある駅で下車してしまった.
 列車はひたすら南下し,スウェーデン,デンマークを目指す...

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