1999年ヨーロッパ鉄道旅行記・5日目

3月8日


 寝ている間にスウェーデン領域を通過し,列車はスウェーデンの南端Helsingborg駅に到着したようだ.ここからはこの旅行の楽しみの一つである列車フェリーの旅である.「列車フェリー」とは列車ごとフェリーに積み込み海を越える列車のことである.Helsingborgでしばらく停車した後,列車は進行方向を変え港の方へ向かう.港では何度も停止しては少し進むという動作を繰り返し,何をしているのかと思えば,同じ列車に連結されていた車両がすぐ隣の線路に停まっているではないか.どうやらフェリーに乗り込むために2両ずつくらいに切り離しているようだ.切り離された車両は順番にフェリーに乗り込んでいく.続いてトラック,乗用車が乗り込んできた.さらにバイク,そしてなんと自転車!までもが乗り込んできた.積み込みが終わるとすぐにフェリーは出航した.航海時間はわずか10分くらいだろうか.あっという間に対岸のHelsingørに到着した.今回の旅行では3カ国目となるデンマークに入国であるが,手続きは何も無い.さっきとは逆の手順で,まずバイク,自転車が下船し,車,トラックが続く.最後に列車がそろりそろりと下船するが,また分割された車両を連結するため,何度も行ったり来たり,停まっては進む動作の繰り返しである.なんとも面倒くさい作業であるが,乗客に乗り換えさせずに乗ったまま移動できるサービスには感心する.連結作業が完了し,列車はデンマーク国土を南下し終点København Hを目指す.列車は若干遅れているようで,København H到着時刻になってもまだまだ到着する様子はない.ベッドに用意されていた朝食用のパンを食べる.結局40分遅れでデンマークの首都København H(コペンハーゲン)に到着した.
コペンハーゲン中央駅舎
▲コペンハーゲン中央駅舎
 次に我々が乗る列車は10:55発のドイツHamburg Hbf(ハンブルク)行きの国際特急である(7:55発の列車を予定していたら間に合わなかったところだ.余裕を見ておいて良かった...).全席指定なのでとりあえず駅の窓口で指定券を取ることとする.3人で60DEK(デンマーククローネ,レートはノルウェークローネとほぼ同じ)であったがデンマークの現金を持っていなかったので,クレジットカードで払おうとした.すると窓口のおばちゃんは相当いやそうな顔をして「現金は無いのか?」と聞いてきたので,「デンマークの現金は持っていない」と強く言うとしぶしぶクレジットカードで指定券を購入させてくれた.これで座席の心配は無くなり今日中にドイツ入国できそうだ.列車の発車まで2時間近くあるので,付近を散歩したかったが,またまた雨オスロに続いてここコペンハーゲンでも...駅のベンチで休憩し雨が止むのを待つこととした.KR山氏は記念にデンマークの紙幣を両替で手に入れたいみたいなことを言っていたが結局両替はしなかったようだ.しばらくすると雨が止んだ様なので,付近を散策することとした.オスロの二の舞はいやだったので,重い重い荷物を預けようかと思ったが,わずかな時間であったし,デンマークのコインも持っていなかったので結局荷物と一緒に動くこととなった.駅を出て真正面に『T I V O L I』の文字が!かの有名なチボリ公園の本家がこんな中央駅の真ん前にあるとは驚いた.さすがに冬の朝から開いていなかったが,記念撮影をする.チボリ公園を一周するつもりで歩き始めるが,あまりにも広く一周していると列車に乗り遅れるのではないかと思い,コペンハーゲン市庁舎のところで来た道を引き返した.
独特の顔を持つデンマーク国鉄特急列車
▲独特の顔を持つデンマーク国鉄特急列車
ゆったりした座席にご満悦の筆者
▲ゆったりした座席にご満悦の筆者
 デンマークの特急列車は独特の顔をしている.ヨーロッパの特急列車は基本的に流線形だが,デンマークの特急は写真のように巨大な外ホロで覆われ,分割併合が容易な機能的な先頭形状となっている.写真はデンマーク国内の電車特急であるが,我々の乗るHamburg Hbf行きの国際特急も同じ形状の顔をした3両編成のディーゼル特急である.車内は向かい合わせのシートだが真ん中に大きなテーブルがあり,座席も日本のグリーン車を遥かにしのぐゆったりとした大きな座席(もちろんリクライニングもする)で非常に気持ちがよい.3両編成と短い編成のためか,座席はほぼ埋まり,よく3人まとまった席で予約ができたと思う(なお我々のボックスの1人空いた席には誰も来なかった).列車はデンマークのシェラン島をひたすら南下する.いくつかの小さな島を過ぎ,ローラン島へと入る.いずれも橋で結ばれていた.København H発車から約1時間半でローラン島の南端Rødbyに到着した.ここからドイツのPuttgardenまで再び列車フェリーの旅である.今度は3両と短くしかもディーゼル車なので切り離し等は行われず直接船内へと乗り込んでいく.
 列車が船内に納まりしばらくすると,ドアが開き,乗客は皆降りて船室の方へと行く.我々もついて行く.列車は船内の一番下の階(地下4階位?)に留置されたのでかなり階段を登る必要があった.まずは船のデッキから周りの眺めを見てくつろぐ.これでいよいよ北欧とお別れでデンマークからドイツへと船は国境を越えていく.他の乗客はと言うとお土産ショップに入っているようだ.よく考えてみれば国境越え区間と言うことで,この船の店は免税店となっている.どうりでみんな免税店に入るわけだ.さてお腹が空いてきた.船内にはレストランがあったが,すでにドイツ入国時刻が近づいており食べているうちに我々の列車が発車してしまうのではないかという嫌な予感がしてレストランに入るのを辞めた.船でのんびりなんかせず,すぐレストランに入って昼食にすれば良かったと後悔してしまった.ドイツ入港時間が迫ってきたので列車に戻る.入港後列車は自力でスムーズに発車し,一路Hamburgを目指す.さすがに空腹に耐えられなくなってきたので,オスロで買い込んだお菓子を食べることにする.お腹が空いているためだろうかこれがうまい.あっという間に空っぽになってしまった.ドイツへ入っても特にパスポート審査とかも無く,検査官らしき人が荷棚の荷物に金属探知機のようなものをあてて通り過ぎたくらいである.
 列車はLübeckに到着.Lübeckはおとぎの国のような街並みらしいので降りて散策したかったが,北欧で行程が一日遅れになっているので,Hamburgへ急ぐ.確かに駅からは雰囲気のある建物が見える.時刻表で調べると明日プラハ組の連中とドイツのFüssenで合流するためには,今日無理してでもドイツのWürzburgまで行っておくと明日の行程に余裕が生まれそうなのでそうすることにする.列車は定刻にHamburg Hbfに到着した.
 ここで水分補給し,少しだけ街の様子を見てから,Würzburgへ行くべく,ドイツ新幹線ICE・München Hbf行きに乗る.空いている席を見つけて座ろうとすると,よく見ると予約札が貼られていたのであわてて別の空いている席に移った.HamburgからWürzburgまでは約3時間半,ほぼ東京〜新大阪の新幹線の所要時間と一緒である.さすがにドイツの新幹線,揺れは少なく静かである.そして座席がゆったりした間隔で配置されており落ち着くところが一番気に入った.(日本の新幹線は座席が5列で前の座席との間隔も狭く窮屈)
 列車は定刻にWürzburg Hbfに到着.辺りはすでに暗くなっていた.早くホテルを探さなくては...まず見つけたホテルが駅近くの薄暗い建物2階.しかしフロントらしき所で呼び鈴を鳴らしても誰も出てこない.雰囲気的にも薄気味悪かったため,逃げ出すようにして建物から脱出し,別のホテルを探すことにした.少し歩き別のホテルを見つけた.今度はすぐにおっちゃんが出てきてくれて対応してくれた.ホテル代はトリプルで一人当たり50DMと適当だったのでここでお世話になることにした.おっちゃんはドイツ語ばかり喋るので何を言っているのか良くわからなかった.おっちゃんの英語は片言で我々と良い勝負であってこれは困ったなと思っていると,日本語のパンフレットを取り出し,さらにロビーでくつろいでいた日本人の青年がドイツ語ペラペラでおっちゃんと我々の通訳をすべてやってくれた.悔しいが我々が大学の教養過程で学んだドイツ語はほとんど役に立たなかった.部屋の鍵は開けにくいので無理をして鍵を壊さないようにとの注意を受けコツを教えてもらった.しかし,やはり開けにくくてこずっていると,ホテルのおっちゃんが心配してか付いてきてくれていて,結局おっちゃんに戸を開けてもらった.
 さて部屋に荷物を置いてすぐに夕食へ向かうこととする.ホテルで紹介されたワインレストランを目指す.レストランは流行っていて雰囲気の良いところだった.メニューはドイツ語で書かれていて何がなんだか分からなかったので,私は「English Menu, please!」と言って英語のメニューを要求したが無いとのことで,レストランで唯一英語を話せる店員を連れてきてくれた(と言っても片言の英語程度しか喋れない人だったが).そして「これはチキンだ,これはビーフだ,これはソーセージだ」というふうに説明してもらい,注文するものが決まった.私はせっかくドイツに来たからということでソーセージを注文した.ワインはさすがに本場のワインという事で,口当たりが良く美味かった.さて料理の方であるが,私の頼んだソーセージの下にはなんとまたまたオニオンのようなもので敷き詰められているではないか.ドイツではソーセージを頼むと必ずオニオンのようなものが付いてくるということか.KR山氏はフランクフルト空港での失敗に懲りずにまたソーセージ&オニオンを頼んだ私がおかしいようで,笑いが止まらない様子だった.ここのオニオンらしきものはフランクフルト空港ほどどうしようもなくまずくは無かったが.

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