特集:第2回

2000年7月1日ダイヤ変更
―特急が中書島・丹波橋に終日停車,中間駅への所要時分を短縮―


概要

 京阪電気鉄道株式会社では,2000年7月1日(土)から京阪線(京阪本線・鴨東線・宇治線・交野線)で新ダイヤを実施する.
 今回の変更では特急が中書島駅と丹波橋駅に終日停車するなど,近年にない思い切ったダイヤ変更となる.昼間時のダイヤパターンについても大きく変更されるものと予想される.これにより,大阪市内〜宇治線・近鉄線との乗り換えが便利になる.さらに,平日の朝ラッシュ時の淀屋橋ゆき特急(枚方市駅にも停車)を6本から8本に増発され,乗客の利用状況にあわせた輸送となる.


ダイヤ変更内容および筆者の意見

(1)特急が中書島駅と丹波橋駅に終日停車

 昭和25年以来続いてきた大阪・京橋〜京都・七条間をノンストップで運転されていた特急が終日京都市伏見区の中書島駅(宇治線乗換駅)と丹波橋駅(近鉄京都線乗換駅)に停車し,一応大阪市内〜京都市内間ノンストップであるものの京阪特急の伝統が崩れる.
 特急の中書島・丹波橋両駅停車により,大阪市内〜京都市伏見区地域,宇治線沿線は大変便利になる.これによる所要時分の短縮効果はダイヤパターンの変更とともに下記の表のようになる.

ダイヤ変更による所要時分短縮
区間 現行 新ダイヤ 比較
京 橋 → 宇 治 64分 46分 ▲18分
京 橋 → 中書島 41分 28分 ▲13分
京 橋 → 丹波橋 44分 30分 ▲14分
枚方市 → 三 条 37分 33分 ▲4分
三 条 → 宇 治 35分 31分 ▲4分

筆者の意見

 これはかなりショッキングだった.JRや阪急が高槻に新快速や特急を停めているのに対し,京阪はあくまでノンストップ特急の伝統を守り続けてきた.深夜時間帯は中書島に停めても良いかなとは感じていたが,いきなり終日停車とはびっくりした.さらに中書島だけでなく丹波橋まで停車させてきたのが驚きだった.現状の特急の混雑度(二人掛けの座席のうち一人分しか埋まらない程度)と急行の混雑度を考えると妥当な選択かも知れない.これが中書島や丹波橋でなく枚方市停車だと特急が大混雑し,『いつでも座れない京阪特急』になってしまうところだったので良かった.
 この特急の中書島停車で京橋〜宇治線沿線が非常に便利になる(18分の短縮).今までこの区間あまりにも時間がかかり過ぎで京阪で行く気もしなかった人達が,JR奈良線京都経由で大阪駅へ向かっていた人が京阪を利用するようになるであろう.また近鉄沿線の人も同様で京都でJRに乗り継いで大阪へ向かっていた人が京阪を利用することになろう.また特急が丹波橋や三条で普通と接続すると(まだ不明),特急停車駅だけでなく京橋〜藤森,深草や丸太町も便利になり,大阪市内〜中書島以遠は特急,大阪市内〜枚方,樟葉,八幡方面は急行と住み分けができて特急と急行の混雑の適正化が期待できる.
 おそらく昼間時のダイヤパターンも大きく変更されるであろう.特急の途中駅停車はかなりショッキングだったが,ダイヤパターンの設定次第では非常に良いダイヤになる可能性を秘めている.ダイヤ変更の詳細が発表されるまで,あれこれ批判せずに待ちたいと思う.

(2)宇治線の本線直通廃止

 特急中書島停車と引き替え,宇治線普通列車の三条乗り入れがごく一部の列車を除き廃止される.

筆者の意見

 これは非常に残念だ.乗客の中には「目的地まで早く行きたい」と思う人だけでなく,「時間がかかっても良いからゆっくり座って行きたい」「乗り換え無しで行きたい」という人もいる.特に中書島駅の配線上,宇治線から京都方面に行く場合直通列車が無ければ必ず中書島で階段を登り降りしての乗り換えを要する.Home to Homeの乗り換えであれば直通廃止でもまだ理解できるが,階段を使った乗り換えは乗客が最も嫌うものである.中書島でのスイッチバックや本線を横切る配線等運用上の問題があるかも知れないが非常に残念である.私は疲れている場合や荷物が多い場合は,20分待ってでも直通列車を乗る.(例:大学の帰り北千里からは待ってでも天下茶屋行きに乗る,梅田からの帰り垂水の寮へは阪神の直通特急に乗る等)
 さらにもう一つ大きな問題がある.現在中書島〜三条間には宇治直通を含めて普通列車が1時間に8本あるが,宇治直通列車廃止によりこの区間の普通のみ停車する駅では1時間に4本しか利用機会が無くなってしまう恐れがある.宇治直通廃止の代わりに,淀(あるいは樟葉)〜三条間の普通列車が新設定される可能性もあるが,それならば『淀駅から京都方面への列車を倍増します』と大々的にPRしても良いのではないかと思うのだが,それが無いため普通列車の削減が行われるものと予想される.これは藤森や深草の利用客が多いだけに,絶対に許せない.

(3)平日朝ラッシュ時の淀屋橋行き特急(枚方市停車)を約10分間隔に増発

 平日朝ラッシュ時の枚方市駅に停車する淀屋橋行き特急が,6本から8本に増発され,約10分間隔で運転される.運転時刻は下記の通りである.

平日朝ラッシュ時の淀屋橋行き特急時刻表
出町柳発 丹波橋発 中書島発 枚方市発 京橋着 天満橋着 北浜着 淀屋橋着
1本目 6:31 6:44 6:46 7:01 7:20 7:22 7:24 7:27
2本目 6:46 6:59 7:01 7:19 7:38 7:41 7:43 7:46
3本目 6:58 7:12 7:14 7:32 7:51 7:54 7:45 7:58
4本目 7:12 7:26 7:28 7:45 8:02 8:05 8:07 8:10
5本目 7:22 7:35 7:37 7:55 8:15 8:18 8:20 8:23
6本目 7:32 7:46 7:48 8:06 8:24 8:26 8:28 8:31
7本目 7:44 7:58 8:00 8:16 8:35 8:39 8:40 8:43
8本目 7:58 8:13 8:16 8:33 8:49 8:52 8:53 8:55

筆者の意見

 元々前回のダイヤ改正で朝ラッシュ時の特急をダイヤをいじらないまま枚方市に停車させたため,特急の大混雑を招いた(京阪・1997年春ダイヤ改正参照).現在では落ち着きつつあるものの,
「枚方に特急が停まるようになって便利になったでしょう?」
「あかんあかん,あれは混みすぎてて乗られへん.」
という会話をよく耳にするため,『もうちょっと空いてさえいれば枚方市から特急に乗りたい』と思っている人が相当数いるものと思われる(枚方市・香里園・萱島で特急に抜かされる急行・準急の乗客のうち枚方市時点で座席にありつけていない京橋以遠へ行く人は全員乗り換えたいと思うはずである).こういう人達を全員乗せるためには特急10分ヘッド化およびロングシート投入が不可欠だと考えてきた.今回の変更でロングシート車が投入されるかは不明だが,ようやく混雑の分散化が実現されそうである.

私の究極の朝ラッシュ時淀屋橋行きダイヤ案:
特急1に対し準急3(淀(枚方市で特急連絡)・樟葉(香里園で特急待避)・枚方市(私市)発各1)のみを運転.準急は萱島で始発の普通または区急に必ず接続.

(4)守口市・枚方公園急行停車時間帯延長

 急行の守口市・枚方公園に停車する時間帯が,約1時間延長される.出町柳行き急行は淀屋橋発21:02まで,淀屋橋行き急行は出町柳発20:39(土休日は20:43)までが両駅に停車する.

筆者の意見

 私は急行・準急の守口市停車は平日の朝ラッシュ時大阪方面行き以外はすべて停車して良いと思っているので(土休日は終日停車),1時間延長と細かいこと言わずに最終まで停車させればと思っている.ただし夕ラッシュ時京都方面行き急行は直前に区間急行を走らせるなどして京橋→守口市だけの利用者をなるべく乗せないようにする必要がある(守口市で普通の乗客を拾う必要はある).
 枚方公園については終日通過させるべき駅だと考える.香里園できっちり普通と接続さえしていれば停める必要はないと考える.もし停めるのであれば休日の昼間のみとしていただきたい.

(5)交野線の輸送力増強

 交野線の列車は5両編成が大幅に増え,輸送力の増強が図られる.また土曜休日の深夜時間帯に上下6本の列車が増発される.

筆者の意見

 宇治線の本線直通廃止で宇治線の運用数が減り,余った5両編成を交野線で使うということであろう.


昼間時の予想ダイヤ

 京阪の公式発表をもとに昼間時のダイヤパターンを予想してみた.ポイントはどこで特急が急行が追い抜くかという点だ.追い越す駅として候補に挙がるのは,枚方市→三条が4分短縮であると発表されていることから,枚方市,丹波橋,三条の3つが考えられる.枚方市の場合は香里園で普通が急行と特急の2本を待避で窮屈なダイヤになること,京橋→樟葉の所要時間が延びてしまうため考えにくいと思われる.次に丹波橋だが,ここでは特急と急行を緩急接続させる意味はほとんどないと思う.というのはここで緩急接続させても停車駅の違いは伏見稲荷と五条だけ(この両駅は急行を停車させなくてもいいと思うが)であり,急行の乗客が特急に流れ,丹波橋→七条で特急の混雑を招き,また普通が深草で特急と急行を2本待避することになってしまう.丹波橋はむしろ特急あるいは急行と普通を緩急結合させるべき駅であり,特急と普通を丹波橋で緩急接続されることで,京橋から特急の停まらない藤森や深草へ行くのに大変便利になる.そこで三条で特急が急行を追い抜くのがベストと考える.この場合比較的需要の多い京橋→丸太町が大変便利になるだけでなく(私は特急を中書島や丹波橋に停車させるより丸太町に停車させるべきだと考えてきた),枚方市や樟葉から京都市内への乗客は急行が運ぶため特急の大混雑は避けられるとともに,淀屋橋→三条で特急待避がなくなり遅いと酷評され続けてきた急行のスピードアップが図られる.
 特急が三条で急行を追い越すことを前提に上り(出町柳方面行き)のダイヤグラムを作成してみた.問題となっていた準急の萱島特急待避を香里園にした.丹波橋で普通は急行と特急のダブル待避となるがそれぞれ乗り換えられるため便利である.しかしこのダイヤの上に淀→三条の普通を設定しようとすると挿入する隙間が無い!ということはやはり京都方普通は15分ヘッドになってしまうのだろうか(深草でダブル待避のスジを挿入することは可能だがそうすると直通普通とほとんど続行になってしまう).なお下り(淀屋橋方面行き)のダイヤは,折り返しの問題さえクリアすれば基本的にこのダイヤの裏返しで可能かと思われる.

昼間時予想ダイヤ
昼間時予想ダイヤパターン(上り)


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