映画二部作

二〇〇七年を迎えました。今年もよろしくお願いします。
さて、今話題の映画二部作といえば『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』でしょう。 もちろん、クリント・イーストウッド監督の作品でしたから、ファンとしては旬なうちに 映画館へ行ってみてきました。 思えば『許されざる者』以後、あと何年あるかわからないと思いながら、この監督の作品だけは なるべく映画館でみるようにしてきたのですが、まだまだ創作意欲は つきることがなさそうでそれどころか年々作品ごとにその力量が見事なまでに 磨かれていくので感嘆せざるをえません。

この二つの映画も「アメリカのきもち、日本のきもち、同じきもち」と言っているように 戦争を描きながらもその勝負を超えて人間と生命をまっすぐにみつめています。 以前ここで『ミスティック・リバー』について書いたときに、正義について触れました。 この『硫黄島からの手紙』でも西中佐が「自分の正義をつらぬけ」という場面がありました。 どうしようもない理不尽な情況におかれても最後まで自分が正しいと思うことを見失わないこと、 自分の正義だけでも信じること、これは安楽死に至った前作 『ミリオンダラー・ベイビー』でも表現されていましたが、『許されざる者』でもそうでした。 今こうして書きながら気がつきましたが、イーストウッド監督の伝えたいことは、 まさに正義ということではないか。他人にとっては正義ではないかもしれない正義でも、 自分にとっては確かな正義。何ものからも流されず、ゆるがない正義。それを忘れてはいけないということを、 作品を通してくりかえし伝え続けている、そして私たちもくりかえし気づかされているのではないか、 そんな気がします。監督にしてみればそういう作品を作り続けることが、きっと 彼の正義なのだろうとも思います。

あと、今回この映画を特集していたテレビで、監督と仕事をした日本の若手の俳優陣が、 そろって監督のことをほめていたのをみて、とても嬉しく思えました。と同時に一緒に仕事ができるなんて なんてうらやましい、とも。これまで海外からの声しか耳に入ってこなかった(共演してなかったので 当然ですが)からかもしれません。「だからいいって言ってるでしょう!」とテレビに向って 思わず言ってしまいました。

感想はといえば、ただすごかった、です。この映画は二本とも長いのですが、それを全く感じさせず、 あっという間に終わってしまいました。きっと二本とものそれぞれの最後の光景をみたら、 もう誰も何もいうことはないと思います。是非とも今、みなければならない映画です。

それにしても毎回完成度の高い作品をみせられて次の作品はどうなるのだろう、と思わずにはいられない のですが、それでもきっとまた期待を裏切らないものを披露してくれることでしょう。 <2007.01.15 vol.82>

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