別れの日

久しぶりの祖父の家。
祖父の書斎は二階の奥にある。相変わらず部屋は四方、天井まで本で埋めつくされている。 この部屋はおそらく祖父の自慢であったであろうと同時に、私にとっても 幼い頃からの憧れの場所でもあった。 庭先が見下ろせる目の前の廊下の窓からは、青い空が広々と見え、 秋風も心地よく、すがすがしい。今年の文化の日は、しかし、祖父との別れの日となってしまった。

先月三十一日に祖父が亡くなり、この十一月はあっという間に最初の一週間が過ぎていきました。 久しぶりに親戚にも会い、従姉とも夜、枕を並べて昔のことを思い出して笑い合ったり、 式では慣れない宗派で初めての経験をしたりと慌しく、それでも無事に祖父を送り出すことができました。 小・中学校の校長職を経た祖父は「いくつになっても努力、勉強。遅すぎることは絶対ない。」と、 その身を以て断言していました。が、それでもやはり私にとっては遊びに行けばいつも笑って迎えてくれる、 ごく普通の、でもちょっと頑固なおじいちゃん、でした。 九十八年、ほぼ一世紀という長い時間を生き続けてくれて本当にありがとう。 <2006.11.15 vol.80>

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