美しき天然
ちんどん屋の音楽と言ったら、すぐに浮かぶメロディがあると思います。
実はこの「美しき天然」(もしくは「天然の美」)という曲が、流行歌であったということを最近私は初めて知りました。
きっかけは、この曲の歌詞が知りたいという母からの要望で早速調べてみたところ明治三十三年に海軍軍楽隊長であった田中穂積氏が作曲し、詞は武島羽衣氏によるものであることがわかりました。内容も美しき天然というだけあって、自然を非常に賛美していて一番の歌詞を読んだだけでも心打たれるものがありました。またさらに明治三十九年には、「夜半の追憶・男三郎の歌」という題で、このメロディに天竺浪人という人が実在した殺人犯のことを詞にして再び流行したとあり、これにはちょっと驚かされました…。
けれども何より私が感銘を受けたのは堀内敬三氏によるピアノの伴奏譜。これがとても抒情的で、それまでちんどん屋のクラリネットと太鼓のイメージだけが
おかげで今となってはすっかりこの曲が気に入ってしまった私は、ここのところピアノの蓋を開けては、この曲ばかり弾いています。
当時の録音資料があれば是非聴いてみたいと思いつつ。<2000.06.15 vol.8>
−参考−
「世界音楽全集19:明治・大正・昭和流行歌曲集」
堀内敬三・町田嘉章共編 春秋社刊
「童謡唱歌名曲全集・続篇」
堀内敬三編 名著出版