循環
『沁々』を出してから、いろんな方から励ましのお言葉をいただきました。とても嬉しく、とてもありがたいと思っています。
私が無感動という感情を受け入れ、その罠から脱出できたのは、サン=テグジュペリとの再会でした。4月に箱根の星の王子さまミュージアムに友人と出掛け、展示を見ながら以前感動したそのままの感動が甦り、まるで春の暖かさを外からではなく内側から感じとる、そんな安らぎを得ることができたのでした。
人は何のために生きるのでしょう。
私はずっと、自分の人生なのだから、自分のために生きるのだと思っていました。詩も自分がやりたいから、ただそれだけでした。
それはそうに違いないのですが、人はやはり自分以外の何かのために生きるものだとも思えてきました。
サン=テグジュペリにしろ、その人だけを見るなら、確かに彼は好きなことを貫き通しただけなのかもしれません。
でも、その生き方を見て、私たちは自分を振り返ったり、新しい発見をしたり、勇気をもらったりすることができるのです。
これは見方を変えれば私たち他人のためでもあるとは言えないでしょうか。
自分のために生きるということは実は人のために生きることと同じなのではないでしょうか。そしてこの逆も。
慰めたり慰められたり。励ましたり励まされたり。
私の詩もそんなふうに生きていってくれたらと願うばかりです。<2000.05.15 vol.7>