少しずつ、春
今年は寒かったせいか、四月に入っても桜がのんびりしていましたね。いかがお過ごしですか。
近頃、伊坂幸太郎氏の作品『終末のフール』を読みました。ここのところ雑誌で特集が組まれたり
映画になったりして、人気急上昇の作家さんになってきました。ひそかにファンだった私は
うれしいのは当然ですがちょっぴり複雑な気分です。
さて今回のこの作品には、今まさに誰かに言ってほしかった言葉があちこちにあって
泣いたり(またしても)笑ったりしながら読みました。
今までの作品にも粋な台詞はたくさんありましたが、これほど今の自分の状況に
タイミングよく合わせたようにまっすぐ入ってきたものはなかったかもしれないと思いました。
最後の瞬間をどう過ごすか。
これに似たような設定で、先月まで放送されていた
『神はサイコロを振らない』というテレビドラマがありました。小林聡美さんの主演でしたので
こちらも楽しく見させていただきました。
「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」というのは伊坂作品の台詞ですが、
大切なことをこんなにも楽しく軽やかに平等にそして(それでも)心の深くに伝えてくれる
気風のよさがこの二つの作品に共通して感じられた心地よさだったように思います。
小説に書かれたことやテレビで聞いた言葉が本当に正しいかどうかはわかりません。
それどどう判断するかは人それぞれに任されています。
こういうものも有りだし、そういうのも有りだよ、という何でも有りな世界観に時に、
単純に、気前良く騙されてみるのもいいのかもしれません。
それでも人は生きていく、のですから。
<2006.04.15 vol.73>