自然の叡智

日本国際博覧会、愛・地球博に出掛けました。
二度行きましたが、待ち時間の長い企業館には行かず、外国館周辺ばかりをみてまわりました。

その中で印象に残ったパビリオンのひとつは、赤十字・赤新月館。Mr.Childrenの「タガタメ」という 曲と共に流れたのは赤十字の活動を写した映像だったのですが、やはり考えさせられるものがありました。 おかげで私の中での万博のテーマ曲はこの曲になりました。

それから永久凍土から発見されたユカギルマンモスの所には、そのすごさに 三回足を運びました。皮膚や体毛が残っているのです。骨でもなく化石でもないところがすごいと 思いました。驚きでした。

あと、マンモスつながりでロシア館もよかったです。こわいもの見たさの気分で胃の断面を何度も 戻って見に行ってしまいました。

そしてツバル。途上国のほとんどのパビリオンは物産展の様相が目立ったのですが、 南太平洋共同館で私が唯一買ったのがこのツバルという国の切手と絵葉書でした。 興味深く思い後日調べて知ったことですが、この国は温暖化の影響で海面上昇によって 地球上で最初に海に沈むといわれているそうです。 彼ら自身の生活は自給自足が大半で、温室効果ガスをほとんど排出していないにも関わらず、です。 ユカギルマンモスは北極の氷が解けてその姿を現しましたが、逆に現在、存在している ホッキョクグマが巣穴を作れなくなり、ツバルが沈むといわれている同じ百年後には 絶滅するかもしれません。その事実を私たちはどう受け止めるべきでしょう。 ツバルでは実際に海面上昇から逃れるために既に国外避難を開始しているそうです。 ですが考えてみればその事態は島国日本にとっても将来他人事ではないはずです。
共同館というパビリオンの中でも一層隅にあったツバルでしたが、私の中には力強く刻まれた国となりました。

あとひとつ気になったのはモリゾーゴンドラからみえた、明らかにゴンドラを通すために何本かの木が その先を切られた跡のある真新しい切り口でした。 私たち人間は想像力を働かせ、いろいろなものを創造でき、確かに素晴らしいものかもしれません。 けれどやりたい放題をやってそのままというのではまるで子供です。 地球温暖化にしてもつまりは特に先進国にこそ責任があるわけですからそろそろ反省して当然ともいえます。 ある新聞では二十一世紀大反省博覧会とも書かれていました。 というよりまず人間であることを振り返るべきかもしれません。

ちなみに私が自然の叡智を感じたのは会場内ではなく、リニモからみえた猿投山でした。 ふるさとのちいさな山とはいえ、私にとってはとても雄々しくみえました。おかげさまで…。

参考資料
「ツバル〜地球温暖化に沈む国〜」神保哲生著 春秋社刊
「ツバル」遠藤秀一著 国土社刊
<2005.08.15 vol.67>

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