旅へ… かえろうとして。(あとがきより)
こんにちは。前回から一年ぶりの「旅」となりました。
その間何をしていたかといえば、九月ごろに『立原道造の詩による作曲一覧』を冊子にしようと決めて、
その作業に思ったより多く時間をとられてしまい、出来上がったのが十二月。
やっと一息つけると思っていたら大好きだった祖母の他界。あまりに突然すぎたので年が明けてしばらくは
何も考えられないでいるうちに、思いがけず、軽井沢高原文庫から企画展「立原道造と谷川俊太郎の詩による合唱曲」のための
協力の依頼をいただき…そうしていつのまにか時間が経ってしまっていた、という次第です。
ただ、それでなくても私の中で時間の速さがすこし遅くなったような気がしてはいるのですが。
さて、つい昨日『教師宮沢賢治のしごと』畑山博著(小学館刊)を読みました。
宮沢賢治に関する書籍は本人の著作以外にもとても多く出版されていて、どれを読んでいいのか迷うところですが、
この本では直接の教え子が教師としての宮沢賢治について証言していて、呼んでみて私は賢治の作品からの良さとは別に、
はじめて賢治自身の人間としての深さに強く感銘を受けました。
そのあと改めて「十一月三日(雨ニモマケズ)を読んで、これは本心以外の何ものでもないと確信しました。
彼は素朴すぎるほど素朴な科学者です。この本はとても読みやすいので是非一読することをお勧めします。
最近の出来事に、イラクでの日本人人質事件、佐世保の小学校六年生の女児による殺害事件がありました。
それでなくても私たちのまわりでは仕事のこと、友人のことなど人との付き合いによる感情の起伏が絶えずあります。
けれどそれでも地球はまわっているし、うたは巡っていきます。火の鳥がゆくのと同じように。
日々、似ているようではじめての旅ばかり。うたもなかなか人間から離れて地球の源へかえることができない。
詩情なくしては、情熱なくしては、ひとは生きていけないから。そしてそれは地球が一番よく知っています。
たとえ無がそれ以上にあったとしても。
また、お会いしましょう。<2004.07.15 vol.54>