ミスティック・リバー

映画「ミスティック・リバー」をみてきました。クリント・イーストウッド氏の作品で、今回は監督のみで主演はしていなかったのですが、センチュリー豊田での上映ということもあり(訪れるのは初めてでした)やはり行ってきました。

一言で何と言えばいいのでしょう。まず、言葉が出ませんでした。悟りの極地とでも言えばいいのでしょうか。もう二週間以上経っていますが、彼の最高作だと思っていた「許されざる者」と肩を並べるほど、いまだに私の中では順位を決めかねている傑作です。

この世の中にはどうにもならないことが多く、むしろどうにもならないことばかり、と言ってもいいかもしれませんがその現実を映画にした映画らしくない映画でした。登場する全ての人物の心理が、一人の人間の中にあってもおかしくない、もしくは例えば同じ状況におかれたら誰でも同じように行動するかもしれない…罪のない人間がいないのとおなじように…。それぞれがそれぞれの正義を信じ、信じたいと思いながら生きていく姿は私たち自身の姿でもあるように私は思うのです。

この映画は地味な上に暗く、重い作品です。それでも、私にとっては今一番みたかった映画であり、最も必要な映画でもありました。毎日が楽しく過ごせるのなら、それに越したことはありませんが。が、この悲しみに満ちた「現実」もやはりあり得るのだということを忘れないために。喜びを期待して受けとめる分、突然の悲しみも苦しみも同じ分だけ引き受けなければならないということを忘れないために。そんな意味で、この川はとても深い深い川でした。

さてもうひとつ。ケビン・ベーコン氏の演じた刑事役について。もし、イーストウッド氏がまだ若くて、もし、この映画に主演するとしたら、きっとこの役をやりたがったのではないかと、私はひそかに思ってしまいました。なぜって似ているのです。顔つきも、立ち回りも、とてもよく。みればきっとわかります。 <2004.02.15 vol.49>

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