「言葉」の方法
一日に滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール(大ホール)に出掛けてきました。四年前にオープンして以来、一度は行ってみたいと思っていた場所で、ようやく達成することができました。
京都まではバス、大津まではJR、そしてホールまでは歩いて行ったのですが、その日はまるで夏の陽気。
それでも、湖を眺めながらの道のりは、なかなかいいものでした。
さて、注目の公演は何かというと、ピナ・バウシュ&ヴッパタール舞踏団の「炎のマズルカ」。
私が特に興味を持ったのは、振付のピナ・バウシュ氏が確立したタンツシアターで、それは動きの演劇、もしくは演劇性の強い舞踏表現形態といわれるもの。
この「炎のマズルカ」はその代表作の一つとされ、気になった私はとにかく行くことにしたのです。
始まってみると、それは期待以上でした。まず、サンバ、タンゴ、ジャズなどの様々な音楽に、ピナ・バウシュ氏独自の振付がなされ、場面によっては芸の細かい演技あり、笑いありで、一瞬何をみにきたのだろう?
と思ったりもして、とても楽しくみることができました。なかでも印象に残ったのが、後半、ダンサーたちが小屋を組み立て、狭いその中で全員がサンバを踊り続けるという場面。
私にはそれが何故か、広い地球(舞台)の中で毎日を生き抜いている人間(社会)の縮図のようにみえ、その表現方法に圧倒され感動しました。
またもう一つ、台詞がすべて日本語だったということが、私にはとても嬉しく思えました。
というのも、海外からの来日公演でも母国語の上演が多い中、わざわざ日本語に直しての舞台に、彼女の誠意が込められているように感じました。
他国の言語や文化に敬意を表してもらえたように思え、些細なことかも知れませんが、私には充分感動する出来事でした。
そして、その日の内に帰宅し、早速、以前切り抜いておいた新聞の記事を改めて読み返してみると、そこにはこう書いてありました。
「踊りが私の言葉だから。−中略−私だってせっかく日本に来たのだから、日本語を話せればどんなにいいかと思っているんですよ。」
踊りを言葉とし、言葉を踊りとする、そんな自分の「言葉」を大切にする彼女だからできたことかもしれません…。
ちなみに、びわ湖ホールというだけあった、ロビーから琵琶湖をみることができて、湖がまるでスクリーンにうつっているようでした。機会がありましたら一度、お出掛けください。
<2002.06.15 vol.32>