すずめの親子
この季節になると、ちいさな子すずめをよくみかけます。我が家でも毎年のように迷い込んできて、気がつくと庭でうろうろしていたりします。
先日みつけた子すずめも、まだ上手に飛べないらしくぴょんぴょんと植木の間を行ったり来たりしていました。
けれどもそうやって子どもが困り果てていると、決まって屋根や木の上から親すずめが心配そうにしてみています。
そしていなくなったかと思うと食糧をどこからか調達してきては何度も運んでいたりします。
さて、同じ日の午後、今度は木の枝に止まってそこから動けないでいる別の子すずめをみつけました。
そしてそのまま隣りの駐車場の方へ行ってしまい、そこからまた動けなくなってしまったので、みかねて私は連れて戻り、試しに最初にみつけた子すずめと一緒にしてやりました。
すると子すずめ同士、なかよくしはじめるではありませんか。何ともほほえましい兄弟のようです。
とはいえ、そんなはずがなく、今度は親すずめがびっくり。食事を持ってきたのはいいけれど、一羽増えているので、あら、どうしましょう、という具合。
とりあえず、自分の子に与えた後、もう一羽にもとまどいながらもおすそわけしていました。
そのあとは、後からみつけた子の親すずめも現われて、交互に降りてきては(一度、出くわしたときは、一方が追い払われていました。それからは様子を伺っていたようです)、
両方の子に食事を与え続けていました。また、鳥のえさをまいておいてところ、それを親がついばんでは子に与えるという光景もありました。
最初にみつけた子すずめも食事をもらって元気になったのか、そのうちに十センチ、二十センチと枝から枝へ渡ることができるようになっていました。
やがて夕暮れが近づいてきて、二羽もおとなしくなり、すっかり兄弟にようにより添っていました。
ただ、危険なので、とりあえず一晩だけかくまうことにして藤のかごに入れて玄関の中に。
しばらくしてのぞいてみると疲れていたらしく、もうすやすやと寝入っていました。
翌朝五時。外ですずめの声がきこえはじめたので、早速庭へ連れていって昨日と同じ場所にはなしてやると、すぐに親すずめが飛んできました。
もうあとは時間の問題です。その日、私は朝から出掛けることになっていたので、残念ながら一日みていることはできませんでしたが、おそらくそれぞれの親について移動していったのでしょう。
帰宅した時には、二羽共いなくなっていました。
この出来事は、人間の単なるおせっかいにすぎなかったかもしれません。が、今日もどこかできっと元気にしていてくれることを願うばかりです。
<2002.05.15 vol.31>