最初の未来
岐阜県美術館で開催中(9月2日まで)のジョージ・シーガル展に行ってきました。
彼は、生身の人間から直接型を取って石膏の彫刻を作るという、独自の手法を
生み出したことで有名で、1996年に静岡で行われた展覧会で初めてその作品群を
見た私はもう、驚きの連続でした。
今回は昨年6月に残念ながら亡くなってしまった彼の初めての回顧展で、出品はすべて
彼自身が愛蔵していたものということで、絵画が多くみられました。
その中でも、私が特に感動したのは「ロトの伝説」で、背後には絵画が置かれてあり、
そこから飛び出してきたかのように前に男性が立っているという作品です。
1958年製作ということなので、おそらく石膏を用い始めた初期の作品ではないかと思います。
私はその作品に彼の最初の未来をみたような気がしました。
私は、どちらかというと絵画よりも(絵画も好きですが)立体である彫刻をみるほうが好きで、
その理由は、どこからも眺められる自由さと、その自由さがあるからこそ生じる作品自身の緊張感を
感じることができるから、です。シーガル氏は、はじめは画家を目指していましたが、
やがては彫刻家へと移っていきました。もしかしたら、私の抱いている想いに近い気持ちが
同じようにあったのかもしれないと、ふと思わずにはいられませんでした。
私はそのことも含めて、今回は作品というより、人間としての彼自身を知ることができたように思いました。
さて、図録によると、この岐阜展の後、東京はBunkamuraザ・ミュージアム、秋田の秋田市立千秋美術館、
そして栃木の宇都宮美術館と、来年まで巡回する模様です。
どうぞ、是非一度、足を運んでみて下さい。
<2001.08.15 vol.22>