初めてのSF作家

先日、思いたって久しぶりに書店の文庫のコーナーをゆっくりとみてまわりました。特に目的もなく、何かあればという程度で眺めていたところ、ありました。一冊。山田正紀氏の「謀殺の弾丸特急」(徳間文庫)。

一目みて、その題名に記憶がなかったので、手にとってみるとやはり読んでいない本でした。日付をみると二年前。私としたことが、と早速購入して帰りました。

私が初めてこの作家を知ったのは、市の図書館で借りて読んだ「夢と闇の果て」でした。あれは中学の頃で、単行本を買うにはとても高くて買えないと思っていた時期だったのですが、 すぐに買いに走ったのをよく覚えています。当時の私の読書法は、兄からの影響が大きく、とりあえず、いいと言われたものを読みつつ、 自分の好きなものを探すという状態でしたが、彼は私が自分でみつけ出した初めてのSF作家だったのです。とはいえ、SFだけでなく冒険ものや推理ものも書かれているので、読んでいて飽きのこない作家の一人ではないかと思います。

ところで「謀殺の−」ですが、読み出してみると、まさに題名の通りで、あっというまに読めてしまいました。ただ、おもしろい、の一言に尽きます。(実は今回はこれをおすすめしたくて書いているようなものです。) こんなにハラハラしながら、おもしろく、わかりやすく、止まることなく読めたのは久しぶりのような気がします。このスピード感は、まさにジェットコースターのようです。

いい機会なので、他にも好きな作品を、と思ったのですが、なにしろ、とても多作なので、挙げ出したら作品リストになってしまうと思うのでやめておきます。 それでもやはり、あえてとりかかりやすさという面から選ばせていただくなら「竜の眠る浜辺」(徳間文庫)をおすすめします。これは「謀殺の−」とは打って変わって優しくて、胸にじんとくる、素敵な作品です。

解説を新井素子氏が書いているのですが、(氏も中学の頃にこの作家と出会ったそうです。)私の感想もこの解説の通りです。その中のことばをお借りして。
『天才じゃないのー、この人』。

ちなみに、現在はハルキ文庫(角川春樹事務所)から多数復刊されています。 <2001.05.15 vol.19>

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