マーティン・ヘイズ&デニス・カヒル

とても美しい音楽。この上なく。
フィドルとそれに寄り添うギター。
とても静か。静かでいて、まるで
私たちの中から何かを引き出そうとしているかのよう。
彼もフィドルを弾きながら
それが何なのか確かめているかのよう。

だから、耳をすまさずにはいられない

これはもう、この人の音楽。
アイルランドの、フィドルの、というよりは
彼自身がこれまでに身に付けてきた
彼自身の音楽。
それが単に分類されただけ。

だから、思わず、耳をすまさずにはいられない。

とても大切な物語をまるで朗読するかのよう。
この上なくきれいな音で。
そして、とても夜が似合うから
ただ、独りにさせてくれるから
見つめる、確かめる、そんな時間をくれるかのよう。

だから、あるいは気を付けなければ

その深みに取り込まれてしまうかもしれない。
かなしみ、とは少し違う。けれど
時に、自立していなければ
たちまちに揺さぶられてしまうかもしれない。
それでも、それが何なのか知りたくて
その音色の魔力がどこから来るのか、ただ知りたくて

私たちは、やはり、耳をすまさずにはいられない
<2009.12.15 vol.114>

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