妖怪の物語
最近よく好んで読むものの中に妖怪の話がいくつかあります。
何が気に入って集まってきたのだろうと考えてみると、どうやら共通点があるようで
一つに日常生活にごく自然に現れるもののけ、二つにそれらがみえてしまう主人公、
三つ目にもののけを退治するのではなくどちらかといえば共存していこうとする、
というもの。内容的には地味な部類かもしれませんが、ざっと五つほど出会った順に
紹介してみたいと思います。
まずは今市子さんの『百鬼夜行抄』。手にとったきっかけは小さなカラス天狗の絵でした。
翼があって鳥が喋っているようでとてもかわいらしいのです。
主人公の律が青嵐という龍の妖魔と繰り広げる日常(?)。絵柄がとても美しいです。
それから畠中恵さんの『しゃばけ』。これは江戸時代の設定で廻船問屋の一粒種、一太郎が
手代の佐助と仁吉(実は妖怪)と共に世間を騒がす事件を解決する推理もの。
どの話もほのぼのとしていて読後、いつもやさしい気持ちにさせてくれます。
次の緑川ゆきさんの『夏目友人帳』。祖母の遺品である妖怪達との契約書、友人帳を
手にして以来、用心棒のニャンコ先生(またも妖怪)と共に契約した妖怪の名前を
返したり逆に狙われたり、という日々を描いています。
この方の作品は他のものも独特の雰囲気があって、りんとしたさわやかさと切なさが
とても魅力的です。大好きです。
そして諸星大二郎さんの『妖怪ハンター』。考古学者の稗田礼二郎が調査のために訪れる地で
思いもよらない不思議な出来事に遭遇する話。これは妖怪というよりは奇怪な感じです。
だからでしょうかその圧倒的な迫力と展開は実に衝撃的です。
最後に熊倉隆敏さんの『もっけ』。これはみえてしまう姉と憑かれやすい妹の二人三脚を描いています。
二人が現実問題として、もののけとどうつき合っていくかという対処法を心身を鍛えながら
会得していく、という成長物で、読みながらつい応援してしまいます。
以上、どれも何故かすんなり入りこめてしまうのは舞台が日常そのものだからかもしれません。
こうしている今もみえていないというだけで案外隣にいたりするのでしょう…。
<2008.11.15 vol.103>