まだ日本が未来を信じていた1980年代、バブル期、低迷期の2005年までの芸能界を舞台にしましたが、どんな仕事にもある激しい競争、勝者の栄光の短さと敗者の諦念(ていねん)、光と影の両方を知って見えてくる生きる意味、人生のより所となるものは何か……。その答えは私自身が切実に求めていたのです。
さまざまな男性が登場するなか、裕福に育った向日性をもつ自信家の修平と、セクシーな魅力の漂う芸術家肌の徳明という対照的な二人には、連載中からファンがつき、「私は修平が好き」「私は徳明派」と名乗るそれぞれの読者の方々から、「遥香は、修平と/徳明と、結ばれてほしい!」と、相反する難しく、熱烈なご要望を頂きました。
その結果、当初考えていた結末とは違う形になりましたが、この小説は主人公たちを実在の人物のように愛して下さった読者のみなさん、様々な意見を出して下さった三人の編集者の方々と共に書いていった気がします。
「小説を読んでこんなに泣いたのは生まれて初めて」「もっと続きが読みたい」とご自分のブログに書いて下さった男子高校生の言葉にも励まされました。
小説は、要約できない世界を描くものですが、たとえれば、『海と川の恋文』は、小さなせせらぎが豊かな川となり最後には海へ出ていって、二度と戻ることはできない、その一度限りの青春の時間の流れ、恋と希望、失望と欲望に心を揺さぶられていた若い日から大人になった男女に届いた一通の恋文を書いたものです。
それがあなたに届くことを願っています。
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