第7回●第一巻『赤毛のアン』と第三巻『アンの愛情』(松本侑子)

 『赤毛のアン』を読んでいない人のために簡単に物語をご紹介します。
 プリンスエドワード島の農家グリーン・ゲイブルズにマシューとマリラという独身の老兄妹が住んでいました。彼らは農作業の手伝いとして孤児院から男の子をもらうことにしましたが、間違って十一歳の赤毛の少女アン・シャーリーがやって来ます。アンの明るさに、朴訥で心優しいマシュー、口調は辛辣でも根は暖かいマリラはすっかり魅了され、愛情深く育てます。
 アンには生まれて初めての親友のダイアナ・バリーができ、さらに仲良しのジェーン・アンドリューズ、ルビー・ギリス、意地悪なジョージー・パイと、つきあいの輪が広がります。
 一方、同級生のギルバート・ブライスには、髪をニンジンとからかわれたことに腹を立て、彼をライバルと定めて勉強の首位争いをくり返します。
 そして州都シャーロットタウンのクィーン学院に優秀な成績で入り、教員資格と大学の奨学金の栄誉を手にして卒業します。
 しかし大学入学の矢先、マシューが心臓発作で急死、一人のこされたマリラは目が弱って農場経営が出来ないため、グリーン・ゲイブルズを売却しようとします。しかしアンは育ててくれたマリラへの恩返しのため、そして愛する唯一の我が家グリーン・ゲイブルズを守るために進学をあきらめ、平和な農村で教師をしながら独学で学ぶことを決意するのです。
 こうしてアンは優しく、賢く、独特な魅力をもった娘に成長します。
 と同時に、世間との人づきあいもなく孤独に暮らしてきた初老のマリラもまた、アンを育てることによって、人を愛し愛される喜び、生きる喜びを初めて知り、人間味をたたえた女性へと変貌していくのです。
 本書に続く第三巻『アンの愛情』(一九一五年)は、十八歳から二十二歳という娘盛りのアンが、島を出て、美しい港を擁(よう)する大都会で下宿生活を送りながら、共学の大学へ通い、勉強に、求婚に、真実の愛にと、さらなる冒険に飛びこんでいきます。(つづく)
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