第6回●原題と邦題について(松本侑子)

 第一巻『赤毛のアン』は、『グリーン・ゲイブルズのアン(緑の切り妻のアン)』という原題です。
 グリーン・ゲイブルズとは、家の特徴的な外観から付けられた屋号で、どこの家のアンなのかを示す呼び名です。
 たとえば前作『赤毛のアン』第十九章で、ミス・バリーに「あんたは誰かね」と問われたアンは、「グリーン・ゲイブルズのアンです」と答えています。同じようにダイアナも「果樹園の坂(オーチャード・スロープ)のダイアナ」というのが一般的な呼び名です。
 アヴォンリーには同姓世帯が多く、アンドリューズ家、スローン家、パイ家、ギリス家など同じ名字の一家がたくさんいます。名字だけでは、どの家の人なのか区別がつかないため、名字ではなく屋号と組み合わせて呼んだのです。
 続く本書『アンの青春』の原題は『アヴォンリーのアン』です。前作のアンはまだ幼く、彼女の世界は学校とグリーン・ゲイブルズという家庭に限られていました。そこでアンと言えば「グリーン・ゲイブルズという屋号の家のアン」だったのですが、第二巻では活動の場が広がり、アンと言えばアヴォンリー校の先生、アヴォンリー村改善協会の実力者として、近隣の村々にまで名を知られる存在となったのです。
黎次へ麗戻る
驪目次戀トップ