(前ページより)
三つめは、二つめの理由とも重なりますが、主人公のアンが悲劇的な詩や戯曲を愛する文学少女で、詩に出てくる昔風の古語の言葉づかいや、大げさな表現、ロマンチックな言いまわしを話し言葉に織りまぜて語る個性的なキャラクターであること。それが何ともいえずおしゃまで、滑稽な笑いを誘ったり、あるいは悲哀をより深く表現しています。
こうした引用については、より深い鑑賞の一助となることを願って、拙訳『アンの青春』には、巻末に「訳者ノート」をつけました。
一つ一つの引用元を探した具体的な検索方法、出典となった詩の内容、そしてモンゴメリが引用によって本書のストーリーと重ねあわせた興味深い意味の謎ときは、翻訳専門誌「月刊eとらんす」(バベルプレス)にて二○○一年二月号より連載してくわしく解説していますので、そちらをご参照下さい。
この連載は、『赤毛のアン』の文学引用を解説した『赤毛のアンに隠されたシェイクスピア』と同様、『アンの青春に隠された英米文学と聖書のことば』(仮題)として単行本化する予定です。
──『アンの青春』(モンゴメリ著、松本侑子訳、集英社、2001年10月25日発行)の「あとがき」より。無断転載厳禁
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