第5回●文学の引用出典探しとインターネット(松本侑子)

 前作『赤毛のアン』と同様、本書『アンの青春』にもたくさんの英米詩が登場します。
 主だったところを列挙すると、題辞のホィティアに始まり、聖書、シェイクスピア劇、マザーグース、ワーズワース、ディケンズ、ロングフェロー、ポー、ポープ、テニスン、オルコット、ミルトン、キーツなどです。
 第一巻では、アンはモンゴメリの祖国スコットランドの文学を頻繁に語っていましたが、第二巻の本書ではアメリカ人の詩が増えているのが特徴です。
 私自身の引用探しの方法も、前作とは大きく変わりました。
『赤毛のアン』を訳した一九九一〜九二年はパソコン通信などのネット媒体に英米詩が流通していることはほとんどなく、検索はパッケージ媒体、つまり電子ブック版の聖書やCD-ROM版の文学全集を使いました。他はすべて紙媒体の引用句辞典です。
 しかし今回は、ほとんどの引用出典をインターネットの海外文学サイトで検索して見つけました。著作権が切れた十九世紀以前の詩や、今では絶版になったた古書がデジタル化されてネットに掲載されているからです。
 以前はネット上に前世紀に発行された古い文学テキストがなかったので、引用元の詩の全文を読むためには、英米に渡り、大学図書館と古本屋で探したものです。しかし本書の翻訳では一度渡米しただけで、すべてネットに詩の原文がありました。ちなみに本書の原書もネットで公開されています。それだけ電子的な文学資産が充実してきたのです。
 それにしてもモンゴメリはなぜ、これほどたくさんの引用を作品に盛りこんだのでしょうか。(つづく)
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