アンの愛情の言葉 第23回

「アンったら、その目で愛情を見ていながら、わかっていないのね。愛とはこんなものだろうという想像が邪魔をして、本当の愛情もそんなふうに見えるって思いこんでいるのよ」──第20章 フィルのせりふ

"You don't know love when you see it. You've tricked something out with your imagination that you think love, and you expect the real thing to look like that.."──Chapter 20 "ANNE OF THE ISLAND" by L.M.Montgomery

『アンの愛情』は、アンが、プリンスエドワード島を離れ、カナダ本土にある大学に進学した四年間の青春の日々を描きながら、一人の女性として成長していく姿を追った長編小説です。
前回のメルマガでは、同級生のギルバートからアンへのプロポーズの言葉をお届けしました。
しかしアンは、求婚を断ってしまいます。
子ども時代から続くギルバートとの友情が壊れてしまったと悩んでいるアンにむかって、大学の親友フィルが語る言葉が、今日の文章です。
年若いアンは、愛情についてロマンチックな憧れに彩られた想像(思いこみ)があり、それが邪魔をして、自分がギルバートに抱いている感情が愛だと気づいていません。
それをフィルは指摘したのです。

考えてみると、私たちも、愛について、さまざまな思いこみがあるのかもしれません。
たとえば、愛とは無垢で清らかでなければならない。
許しと癒しに満ちた、優しく、寛容で、穏やかなものでなければならない。
自己犠牲をともなわなければならない。
ロマンチックで、ドラマチックで、胸ときめくものでなければならない……など。
そのために、そこから外れている自分の感情を愛とみとめられなかったり、あるいは、パートナーや恋人、両親、子ども、兄弟姉妹への気持ちを……そこには好意や情愛だけでなく、ときには様々な感情もふくまれていて、一筋縄ではいかないこともあるかもしれません……を、純粋な愛情ではないと引け目に感じることも、あるかもしれません。(次へ)
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