第1章 怒りっぽい隣人 (16)

「ところでアン、聞くところによると、村の改善協会というものを始めるそうだが、それはどんなものだね」
「あら、この前の討論(ディベイティング)クラブで、若い人たちに相談しただけよ」アンは赤くなった。「みんないいことだって賛成してくれたわ、アラン夫妻もよ。今じゃ、いろんな村にあるのよ」
「そんなものを始めると、自分から厄介ごとを招いて抜けられなくなるよ。ほうっておくんだね。人は改善なんかされたくないんだよ」
「まあ、人を改善するんじゃないの、アヴォンリーを良くするのよ。もっときれいにしようと思ったら、するべきことがたくさんあるわ。たとえばリーヴァイ・ボウルターさんを説得して、上の農場に建っているあのぼろぼろの家をとり壊してもらったら、村の景色が良くなるでしょう」
「それはもっともだ」リンド夫人も認めた。「あのあばら屋は、ここ何年も、集落の目ざわりだからね。でもまあ、あのリーヴァイ・ボウルターを説き伏せて、一セントの金にもならんことを世間のためにさせようなんて芸当ができるなら、どうやるのか、その場でとくと見たいもんだ、まったく。アンのやる気をくじくつもりはないんだよ、あんたの考えにも一理あるからね。といっても、どうせくだらんアメリカの雑誌かなんかで思いついたことだろうが。友達として忠告させてもらうとね、これからは学校の仕事で手いっぱいになるんだから、改善協会なんかにわずらわされないほうがいいよ、まったく。といってもあんたは一度決めたら、とことん進めるだろうがね。おまけに、なんとしてでもやり遂げるんだから」(つづく)
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