第1章 怒りっぽい隣人 (17)

 アンがきゅっと唇を結んでいるところを見ると、リンド夫人の推測は、あたらずといえども遠からずだった。アンは、改善協会の設立にむけて燃えていた。ギルバート・ブライスもはりきっていた。ギルバートはホワイト・サンズで教えることになっていたが、週末は、金曜の夜から月曜の朝まで村に帰ってくるのだ。ただし、ほかの若者たちにとっては、定期的にみんなで集まって「愉(たの)し」ければ、何でも歓迎というだけだった。村を「改善する」とは、何をするのか、アンとギルバートのほかは誰もはっきりわかっていなかった。しかしアンとギルバートは、どこを改善すべきか話しあい、どのように行うか具体的な計画を出しあううちに、理想のアヴォンリーはまだこの世のどこにもないものの、二人の胸には、はっきりと浮かびあがるまでになっていた。
 リンド夫人は、もう一つニュースを持ってきた。
「カーモディの学校は、プリシラ・グラントという娘さんが先生に決まったよ。アン、たしかこんな名前の女の子がクィーン学院にいなかったかい」
「ええ、同級生よ。プリシラがカーモディで教えるなんて! すてき!」アンの声が上ずり、灰色の瞳が、宵(よい)の明星のようにきらきらと輝いた。リンド夫人は、またわからなくなった。アン・シャーリーは本当は美人かそうでないか、いつになったら納得のいく結論が出るだろうか。(第1章終わり)
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