第1章 怒りっぽい隣人 (14)

「またどうしてだい。ほかに誰が来るんだね」マリラがきいた。
「知らないのかい? ええとね、まずドネルという一家が、ピーター・スローンの古い家を借りたよ。ピーターは製粉所をやるために、その男を雇ったのさ。島の東の方から来たんだが、どんな一家だか誰も知らないんだよ。それから、あのだらしのないティモシー・コトンが家族そろってホワイト・サンズから越してくる。あの一家ときたら、世間のお荷物でね。亭主は肺病やみで寝ついているか、さもなければ盗みをしているかだし、女房は怠け者でね、横のものを縦にもしない。すわったまま皿を洗うんだとさ。それからジョージ・パイの家では、旦那さんの甥おい)っ子に身寄りがなくなったんで引きとったよ。アンソニー・パイといって、アン、あんたが教える学校に通ってくるよ。パイ家の子どもが来るということは、何かしら面倒が起きるということだ、まったく。それからもう一人、よそから来る。ポール・アーヴィング(18)という子が、合衆国からおばあさんのとこに来るんだよ。マリラ、ポールの父親を知っているだろう……スティーヴン・アーヴィング、ほら、グラフトンのラヴェンダー・ルイスに求婚して捨てた男だよ」
「別に捨てたとは思わないがね。喧嘩したんだよ……両方が悪かったんだろう」
「そうだとしても、結局、あの男は、ラヴェンダーと結婚しなかったじゃないか。あの女は、ふられて変わり者になった、世間じゃそう言っているよ……小さな石の家に一人っきりで住んで、自分でこだま荘と名づけてね。一方のスティーヴンは合衆国に行くとおじさんと事業を始めて、アメリカ娘ヤンキー)と結婚したよ。それから一度も島にもどってこないが、たしか母親が一度か二度、会いに行ったはずだ。ところが二年前、スティーヴンの奥さんが亡くなったもんで、息子を島にいる母親にしばらくあずけるんだよ。十歳だが、願ったようないい子だかどうだか。アメリカヤンキー)連中なんて、わかったものじゃない」。(つづく)
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