第1章 怒りっぽい隣人 (9)
赤毛と言われた瞬間、アンは、その髪のように赤くなり、逆上した。この話題はいつもアンの感情を激しく刺激するのだ。
「たとえ赤毛でも、全然ないよりましでしょ。耳のまわりにちょろちょろ生えてるだけじゃない」アンは、すぐさま切り返した。
鋭い一撃だった。ハリソン氏は、実のところ、はげ頭を大いに気にしていたのだ。激怒のあまりうっと言葉につまり、黙ってアンをにらみつけるのがやっとだった。
それを見るとアンも胸がすいて怒りがおさまり、あとは自分が優勢なのをいいことに追い打ちをかけるように言った。
「ハリソンさん、今回のあなたの無礼は、大目に見てあげましょう。何しろ私には、想像力がありますからね。カラス麦畑に牛が入ったら、どんなに癪しゃく)にさわるか想像できますわ。だからあなたがおっしゃったことに、腹をたてたり根に持ったりしませんよ。もう二度とドーリーがおたくの畑に入らないと約束しましょう。名誉にかけて誓います」(つづく)
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