コータがまだ4、5歳の頃のことである。
近所の小さな男の子が彼を慕っていつもくっついていた。お菓子を買いに行くのも、自転車に乗って公園に行くのにも「オニィチャン」と言ってくっついて来る。
コータは末っ子だから「オニィチャン」の一言に弱い。一生懸命にその子をかわいがって一緒に遊んでいた。
ある日のこと、お菓子を買ってお店を出て来たとき
「よーし、あそこまでカケッコしよう! よーい、ドン!」
タッタッタッ。
二人は走り始めたが、どんなに頑張っても、その小さな男の子はコータよりどんどん遅れる。
「あーん、オニィチャン待ってぇ」
その子が半べそになったことに気づき、
「あっ、あれ? なんか走れんごとなったなあ」
といってコータは足踏みを始めた。
そのスキにその子がコータの横をすり抜けて行き
「ワーイ、ボクが一番!」
大喜びする男の子と、泣かせずにすんだと思ってホッとするコータ。
負けん気の強い私には信じられない光景だった。
高々4、5歳の幼児でしかないコータが、自分より小さい子に譲る姿を見てわが子ながら感心してしまった。
「ホントに私の子? まさか、産院で取り違えたか? それにしても、あんたは偉い!」
わが子から学ぶ母であった。
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