シンジの中学の担任はユニークだった。
学生の頃は相当母親を泣かせたそうだが、どういうわけか教師となった。
筋金入りのワルだったらしく、その細〜い目の隙間から見える眼光は鋭く、全校生徒もその迫力にはかなわないとみえ、彼には一目置いていた。
その先生を愛情を込めて、ニホティーチャーと、我が家では呼んでいた。
シンジの中学卒業最後のホームルームでの話。
今時の子供たちは、先生が前で話していようがどうしようが、我関せずでやりたい放題で行儀の悪いことこの上ない、というのが定番なのだが、このクラスだけは違っていた。
生徒全員が、最後のホームルームでのニホティーチャーの一言一句を聞き逃すまいと、耳をそばだて、熱い視線を彼に向けている。
この最近ではついぞ見ることのない光景に、その意外さが心地よく、私は内心「よし、よし」と思って見守っていた。
兄弟なのだろう4、5歳くらいの幼子ををひざに抱いた一人の男子生徒は、ニホティーチャーの話を聞きたいものだから、その子に静かにするようにそっと言い聞かせていた。
そこにズングリムックリのニホティーチャーがゆっくりと口を開いて、最後のホームルームを始めた。
いいか、お前たち。悪いことは14歳までど。
それ過ぎたら、捕まるんぞ。悪いことは14歳までで止めとかなぞ。
(おいおい! あんた、仮にも中学校の教師やろ。いいんかい、そんなこと言うて…)
子供たちは黙って聞いている。それまでの生徒と先生の関係があってこその、先生の話なのだろう。誰も笑ったり、茶々を入れたりする者もない。
ただ、一点に集中して先生の話を聞いている。
ああ、この先生には生徒たちに対する愛情があるんだなあ。
その心が子供たちに伝わるから、おとなしく話を聞いているのだなあ。
私は心底嬉しかった。まだ、こんな貴重な先生が学校にはいるのだ。
暴言・暴力で生徒たちを押さえ込もうとする先生、ただ目をつむっていれば、トコロテン式に子供たちがどんどんと通過していくとばかりに、子供たち以上に「我関せず」で済ます教師たち……
それまで散々そんな教師ばかりを見てきたせいで、私の中学校教師に対する評価は決して良くはなかったが、この先生に対しては考えを改めざるを得なかった。
(ニホティーチャー、どんなことがあっても先生稼業を続けて下さい!)
私は心の中で、彼に応援旗を振っていた。
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