紙など漉いてみる

実はこの春から、和紙造形大学というところに通っておるのです。

元々私は版画をやっているわけですが、
その版画に和紙をコラージュとして取り入れるというのが
気に入っておりまして
色版の代わりに、テクスチャの面白みを付け加えるために、
と試行錯誤の毎日なのであります。
ある日、ネットサーフィンで和紙の作品などを見ながら
自分で漉いた和紙をコラージュ出来たら面白いな・・
とふと思い立つに到りました。
いつもは和紙の専門店などで買っているわけですが
自分の欲しいピンポイントな色を探すのも難しいし
いろいろなテクスチャの和紙も好きで持っているのですが
高かったり、なんだりかんだり・・。
ある程度自分で供給できたらいいんじゃないかと短絡的に考えてしまったわけです。

思い立ったら早いですから、いつもの如くにばばばっと検索して
恵比寿で紙漉を教えてくださる先生がいるというのを見つけだし
善は急げとその場で予約し、一日体験をしてきたわけです。

それが結構面白い体験でして、
色紙大の紙を漉くのですが、場所やスペースや道具も、家庭向きになっていまして、
和紙と言ったら、あの大きな紙漉の機械で本格的に漉くか
画材屋に置いてある、牛乳パックで葉書を作る、という類のものという
両極端な方法しか知らなかった私には目から鱗の落ちるようなひとときだったわけです。

まぁ、それから発展しまして、今は、和紙造形大学というところに通うに到ったわけです。
随分、途中を端折った気もしますが。

和紙造形大学というのは、大学と言っては居ますが、別に学校法人と言うわけではありません。
二ヶ月に一度、二泊三日で群馬の川場村というところに行き
そこで和紙造形作品を作る。というものです。
和紙造形というのはそこの学長先生が作った言葉ですが、紙漉の方法を活かして、
絵画作品の様な和紙を漉きあげる、というものです。

前回、4月の初回の授業は、
この学長先生が試行錯誤の上、編み出した方法での
紙漉の基本を教えてもらいました。
本当は初回からHP上でレポートしようと思っていたのですが
びびってしまって写真を撮ることが出来ませんでした。
今回は、前回同様びびってはおりましたが、
がらくた工場工場長としての任務感に燃えて
こっそりと写真を撮って参りましたので、ここに紹介しようと思います。


今回は和紙の染色と、今後の造形作品作りに欠かせない「型」を使った
紙漉が講義の内容。

和紙の染色の部分は、今後、版画に和紙を使いたい私には一番しっかりと
覚えておきたいところでしたので、
しっかり聞いて、みっちりノートしてきたのですが
それはまあ、皆さんにはあまり面白く無いところだと思うので、勝手に割愛。
和紙造形ってなんぞや・・の第一歩である「型」を
使った紙漉についてレポートしましょう。そうしましょう。


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まずは、これが紙の素となるものです。
楮を水にといています。攪拌が命。
紙を一定に漉くためのネリも入っています。
ネリとは「トロロアオイ」などの草から取ったオクラのねばねばみたいな物です。
これを混ぜることによって、楮の繊維が一定の厚さに広がり、紙が綺麗に仕上がります。
ここで使っているのは化学的に作り出したネリ。
ボウルの中が黄色いのは、楮をあらかじめ染めているから。
染料でいろいろな色が作れますが、まずは色の三原色、赤、青、黄の楮を
作って、それを混ぜて他の色を作っていく方法です。



これが紙漉の道具です。
一つのテーブルで三人で漉くので、道具がひしめき合っていますが
右下方が私の席。
中央の木枠が簀という道具です。
木枠の間にステンレスのメッシュが貼ってあります。
このメッシュに楮の入った水を流すことによって、
メッシュ部に楮の繊維が残り、水だけがしたに流れていきます。
それを何回も繰り返して、楮の層を作っていきます。
そして、このときに、楮の繊維を均一に簀全体に行き渡らせてくれるのが
前述したネリの役目なワケです。
簀の中央に置いてあるのはゴム板で作った「型」です。
これで紙を漉きながら模様を作っていきます。



紙を流したくないところをゴム板で止めて
青の楮を流したところ。



型を少しづつはがしながら違う色の楮を
流していきます。
グラデーションにしているのでわかりづらいですが
これで、三層くらい、青からじょじょに紫に色を変えて
流しています。



右上、最後のゴム板をはがしました。
簀のメッシュが見えていますね。
このゴム板をはがすのも緊張します。
うっかりどこかに手が触れると、その部分の楮がよれたり剥がれたり。
泣きそうになります。



左下にもとりかかりました。
今度は輪の中央部から型をはがしています。
まだ、練習中なので、どういうやり方がやりやすいか試行錯誤なのです。



全部、流し終わったら、全体をつなぎ止めるために
上から、白(他の色でもいいのですが、私の場合は白で)の楮を
何回か流しておきます。
これは写真取り忘れました。
なんせびびりながら、こっそり撮っているもので。


同じ型で、白とオレンジの作品も作りました。
実はこっちの方が先に作ったのです。
白くしたい部分の型だけ抜いて、
黄色を流しています。
これは、黄色とオレンジのグラデーションを
型に依らずに、流し方で出しています。
写真の左下からまずは、赤を多めに混ぜた黄色を流して、
本来なら全体に行き渡るように流すべき楮を手前だけにかけています。
回数を重ねる毎に、流す楮に黄色を混ぜて
少しづつ、右上に移行していっています。



ゴム板を全部はがして
型の周りに及んでいた黄色の和紙も綺麗に取り除いてから
全体に白い楮を流しました。
私は頭に版画のことがあるので、白ベースの紙を漉いて
これに直接版画を刷ってみたいなどと思いましたが
(実際にやるかどうかは別の話。だいたいこんなお粗末な紙で版画がすれるものなのか・・)
バックを白で作ったのは私だけでした。
ちなみにこんなアホみたいに簡単な
図案で作ったのは私だけです。
皆さん、魚が海で泳いでいたり、風車とチューリップだったり
ちゃんとした作品としての貫禄を醸し出しておりました。



漉き終わったら、斜めにして乾かします。
この、簀き枠のまま、乾かすのも、学長先生流です。



出来あっがった和紙は、まだ実は手元にないのです。
今回、私用の為に二泊三日の過程をこなせなかった私は
出来上がりの作品を友人に託して帰ってきてしまいました。

なので、出来上がりは、また後ほど。


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この和紙造形大学、泊まりがけなので
普段の生活から離れて、のんびり紙漉に向き合ってと
本当に楽しい経験になります。
宿泊施設も綺麗だし、ご飯は美味しいし、温泉付きだし。
カリキュラムもゆったりなので、ある意味普段の生活で
家にいれば、貧乏性で何かしらせずにはおれない私には
骨休めにもなってたりします。
三食昼寝付きに近い・・・。



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