たまには、版画の話なぞ。

ちょっと前置きが長いので、いきなりコラグラフを見たい方はここをクリック。

私の版画のページをご覧になっていただけた方はおわかりの通り
私の版画はエッチングというものが主でして
銅版に刻み込んだ溝にインクをつめ、プレス機を通すことで
圧力をかけて、紙にインクを写し取る、という凹版の技法です。

一概には言えないのですが
山本容子さんの作品などに見られるような「線画」を得意とする技法です。


一言に銅版画、凹版といっても、様々な技法がありますので
(私のprintsのページを見ていただいても、一つの作品の中でエッチングの他、
ドライポイントやアクアチントなど大概2〜3の技法を組み合わせています。)

こういうのは、なかなか、実物を見ないことには説明だけではわからんもんです。
それに興味もなければそんな説明文なんか読みたくもない。
いや、わかってるんですけど、・・まぁ、そうは思っても、もうちょっと読んでみて下さいよ。


やっぱり前置きが長いので、もう先を見たいと言う方はここをクリック。


エッチングを始めて一年ほどたった頃、私はこれに色をのせたいと思うようになりまして。
ただ、前述の山本容子さんがやっていらっしゃる手彩色、
これは刷り上がった線画に、絵の具で色を付けていくという方法ですが
これがどうも私に向いてない。目指す仕上がりともちょっと違う。
エッチング用の版と色用の版を使って作るものにも挑戦しましたが
それもなんかちょっと違う。

そのうち、版画を習っている先生に
「あなたの絵みたいのには、英字新聞などを貼り込んでも面白いよ」
といわれた事をきっかけに「英字新聞がいいのなら、色和紙を貼り込んだらどうだろう」
と思うようになり、コラージュを取り入れた方法にしたところ、
これがもうなかなか良くて。
ようやく今後も取り入れていきたい
と思える方法にたどり着いてきたのです。

そんな折り、ネットで版画の世界を徘徊しているうちに、面白い技法に出会いました。
それが今回ご紹介しようとしているコラグラフ。(なんかテレビ通販みたいになってきた)
皆さん、小学校のときに紙版画を作りましたね。紙の上に紙を貼り合わせて作る版画。
コラグラフはそういった技法です。
ただ、紙版画は「ばれん」を使って刷る凸版でしたが、コラグラフは厚紙の層を
表現したい形にはがしたり(溝を作ってそこにインクを詰める。凹版ですね。)
または表情を出すために、羽毛や葉っぱを貼り込んだりと、
かなり自由に作る事が出来るのです。

これは使いようによっては面白いかも。
ということで、ただいま、鋭意勉強中。
先生から借りた本の中の説明をもとに、
今まさに自分で自分なりの表現方法を模索中なのでございます。
基本的には線画に、コラージュと
このコラグラフを取り入れて行きたいというのが今の願望。

さて。ここまで読んで下さって(前置きをとばさずに)
「で、だから、説明だけじゃ、よくわからないっていってるじゃないのよ」
と思っていらっしゃるあなた、有り難う御座います。
ようやく、私の勉強中のその様子をご紹介いたします。

ええ。前置きが長くてすいません。

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まずは、版の用意をしましょう。
厚紙。イラストボードとか、そういったものがいいでしょう。これにニスを塗ります。
紙を防水仕様にするわけです。
今回は、色をのせるところ以外はできるだけ白く仕上げたいので
ニスは何重にも塗って紙をつるつるにしてしまいます。
(ここであえてつるつるにせず、その表情を楽しむ事も出来ます。)

厚紙に表現したい形の凹みを作ります。
例えばハート形ならハート形をカッターで切り、(このとき、切り取ってしまわないように。
凹みを作るだけなので、厚紙の層を二・三枚はぎ取れるくらいで。) その部分の紙を剥がします。
また、その厚紙に葉っぱや布や糸、アルミホイルをしわくちゃにしたものを貼り付けても
面白い表情が出ます。レースなんかもありです。
私がコラグラフを知るきっかけになった方は、スカートのホックの部分をつぶして
貼り付けたりもしています。
それこそ、ここは自由。

最後にニスを薄く塗っておきます。補強用というところでしょうか。
私は一度、木工ボンドで布などを留めた後、そのまま刷ったら、
木工ボンドが水性だもんで、版と紙がべっとりくっついてしまい
再生不可能になりました。アホです。ちゃんと考えればわかる事ですが
皆さんは気をつけましょう。

ここまでが簡単な版作り。

さて、刷ってみましょう。



まずは、版。これは練習用でやっすい紙です。
ぶっちゃけ、スケッチブックの表紙です。
今回は二版用意しました。
一枚(左)には和紙がはってあります。一枚は点々模様に厚紙の層を剥がしてあります。


二枚目のアップです。あまり接写に耐えないデジカメですいません。
表層を剥がしたためにくぼんでいるのがわかっていただけますでしょうか。



これにインクを詰めていきます。
私は色のインクは数本しか持っていません。
赤と黄色と青と白。これで大概の色は作れます。
もっと精進したら色インクはそろえるつもりですが、今のところはこれで十分。

こうやって混ぜて好きな色を作ります。


一版目にインクを詰めました。
あ、和紙は適当に身近にあった赤い和紙を使ったら、
色インクの色味がわからなくて困りました。
アバウトな性格がもろにでています。
でも、インクがのっているのはわかりますね。



これでもか、これでもか、というぐらいに周りのインクはよく拭いておきます。
私は紙を使ってインクを拭きあげます。
こういうとき、どういうもので拭いて、どのくらい拭くか、は好みもありますし
目指す仕上がりによっても違います。
私は試行錯誤の上、紙で拭くやり方におさまりました。


プレスで刷ります。
一人でやっているので刷っている写真はありません。
ちなみに秘書は私が版画を始めると作業部屋の道具入れ(ワイン箱で自作)の上の
定位置で寝ます。
プレス機のハンドルをぐるぐる回すとはじめは怖がっていましたが最近は慣れた様子。



刷れました。
インクが刷り取られたので、
先ほどの写真より版の黄色が朱色くらいになっているのがおわかりでしょうか。
当然ですが、版と出来上がったモノでは左右逆になっております。
何を勘違いしたか、色版と線画を左右逆にしてしまったことがありました。
あれはへこみます。いえ、版じゃなくて私がへこむ。


刷り上がったモノ。和紙のけばけばっぽいところまで綺麗に表現されています。


次に二版目。これは完全なる凹版なので、インクのふき取りが難しいです。
目を皿のようにではなく、手を皿のようにして、インクを拭くべし拭くべし拭くべし。
溝だけに綺麗にインクが詰まっているのが正しい。


刷りました。どうでしょう。
版の方にも一版目の黄色が移っています。
油性インクは乾きが遅いのでこうなります。
この方法を用いて、二版三版の下書きに使ったりもしますが、
またそれは別の話。蛇足でしたね。



これが一応完成品。
これに線画を組合せると面白いかもしれません。
線画やもっとインパクトのあるものをコラグラフで作るのも面白いですねきっと。
これの良いところは、銅版やアルミ版と違って色が濁らないところです。
アルミ板で黄色を刷ったときは、アルミと反応して、
黒い汚い黄色になってしまって閉口した事があります。



まだまだコラグラフの世界は奥が深いです。
凹版と凸版を自分の好きに組合せられるし、素材(和紙や糸など)も自由。
頭で考えてもしょうがないので、どんどん試してみて
自分の作品に活かしていければと思う今日この頃。

そういえば、秘書猫は昨日、プレス機のハンドルを回しておりました。(ちょっとだけ)
もうちょっと指導すれば、立派な刷り師になってくれるかもしれません。


長々とご静聴(?)有り難う御座いました。
頑張りますよ。精進します。日々是精進。


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