一年ほど前から気になっていたヤン・シュヴァンクマイエル。
彼の新作と、過去の作品を渋谷で公開するということで、
新作「オテサーネク」と、レイトショーで過去の作品を一気に観賞。


『アリス』『ファウスト』『悦楽共犯者』と、独自の映像世界を造形してきた
チェコのアートアニメーション作家、ヤン・シュヴァンクマイエル

「オテサーネク」はチェコの民話。
子供のいない夫婦が木の切株を子供として育てると、
その子供・オテサーネクは大鍋のおかゆを平らげ、犬や豚や農夫、
果ては両親まで飲み込んでしまう。
この民話を題材にして舞台を現代に移したのが、ヤン版「オテサーネク」


うまい言葉が見つからないのですが、とにかくすごかった。
東欧独特の光と、彼得意のアニメーション。
切株でできたオテサーネクが、泣いてじたばたするシーンを、
彼は、コマ撮りのアニメーションで表現しているのですが
そのたどたどしい動きは、昨今のCGを駆使した映像よりも逆にリアルで刺激的でした。
食べる行為をエロティックなものとしてとらえるアーティストは多いですが
この中の食事シーン
(オテサーネクのみならず、語り部として登場する少女のなにげない食事シーンまで含めて)は
どれもこれもグロテスク。
どうしたら、こんな風に撮れるのだろう・・・。

もともと彼の創り出す映像に興味があって観に行ったのですが、
強く印象づけられた映像のインパクトはもちろん、
親のエゴ、母性と父性、子供の残虐性を描き出した内容も、全てが
人間の本能の部分に突き刺さってくるような痛々しさと、
あとからじくじくと効いてくるような痛さが伴います。
忘れられない作品に出会ったという感じです。


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