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215.自己同一性とは「自分は何者なのか」という概念を指す 20220708

 

自己同一性とは「自分は何者なのか」という概念を指す

【アイデンティティ】遺伝生物学的アプローチから同一のDNAで形成された個体が自分という考えがある。この場合一卵性双生児は一人とみなすべきであるのか問題が発生する。また切った爪や髪は自分なのか他人なのかという問題もある。

【アイデンティティティ】自分と他人の区別という観点からは免疫により排除されるものは他人という観点がある。これは自分の細胞を攻撃する自己免疫疾患は他人なのかという問題が発生する。免疫抑制剤を投与された人間は何人いても一人なのか問題もある。

【アイデンティティティティ】古典的には、自分が自分であると考えるのは自分の脳であるので、自分の脳で動かせる範囲が自分という考えがある。この場合、他人の手は自分では動かせないので自分ではない。しかし自分の体であっても自分の意志ではどうにもならない部分は自分ではないのかという疑問が生じる。思春期男子の股間などが典型的で、自分の意志とは関係なく大きくなったり小さくなったりする。あれは他人なのか問題がある。

【アイデンティティティティティ】内臓については自分の意志では動いてくれず、逆に内臓の都合でもっと食べろだとか脳の方に指示を出す。自分の内臓は自分の一部のような気がするが、実は自分ではないのかもしれないという疑問が発生する。

【アイデンティティティティティティ】食べろという指示に基づいて食べたものは、残念ながら100%吸収された身体を形成するというわけにはいかず、不要なものは定期的に排泄されることになる。排泄前は自分だが、排泄した途端に異物となる。すると排泄前の時からそれは他人であり、他人を生成する内臓というものも実は自分ではなく他人であるということになる。

【アイデンティティティティティティティ】駅を出たとたんに便意を覚えた。
駅から仕事場までは15分ほど歩くのだが、もともと倉庫街だったということもありトイレを借りられるような店舗が少ない。新型コロナの流行でコンビニも貸してくれなくなった。年のせいか便意を覚えてから切羽詰まる状態になるまで時間が短くなってきている。会社までもつのか不安がよぎる。いぞぎ足で会社に向かう。

【アイデンティティティティティティティティ】他人であるところの内臓は自分の要求を伝えるだけで、こちらの要望は一切聞いてもらえない。早歩きは次第に小走りとなり、暑さのための汗に加えて脂汗が額ににじむ。
内臓と自分が自己同一性にて統一されていれば、まあもう少し我慢したまえ君、仕方ないなあ、でもなるべく早く個室に入ってくれたまえ などの会話が成立するのだが、いまから会社のトイレに到着するまでに言語を学習してもらうにはスピードランニング教材をもってしても難しいのではないか。
ようやく会社に到着する。こんな時に限って扉を開くためのカードがカバンの奥に隠れている。あああと口から変な声が出る。
扉を突破し自分のエレベータで自分のフロアに向かう。懸命の防御作業もむなしく突破されそうになる。エレベーターの扉が開き一瞬気が緩んだすきににゅるんべるぐと何かが頭を出す。いやまだ頭は下着に到着していない。まだ間に合う。トイレに駆け込み個室に入ると同時に堤防が決壊する。

私「ああ、もう無理無理無理無理無理〜」

お尻「ムリムリムリムリ〜」

被害を最小限にとどめるよう急ぎ脱衣する。下着に包まれた何者かは私の手のひらで受け止められる。

【アイデンティティティティティティティティティ】不幸中の幸いでズボンは汚れずにすんだ。 生まれ出でたものは処分し、汚れた体を拭き清め、よく手を洗う。 今回の悲劇は内臓と脳の自己同一性の不一致が巻き起こしたと言える。このような自己同一性の危機(アンデンティティクライシス)はいつどのようなきっかけで発生するのかわからない。油断をしてはいけない。アイデンティティクライシスは常に君も狙っているのだ。

【アイデンティティティティティティティティティ】さあ、仕方がないからコンビニに替えのパンツを買いにいかなくちゃ。

 


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