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214.配られないティッシュ 20220325

 

 なぜか私はティッシュ配りの人からポケットティッシュを受け取れない。

 私が受け取るタイミングで手持ちのティッシュがなくなって段ボール箱に取りにいくことはよくある。また、前の人が広告を気にして配布する人に質問しはじめて配布の手が止まることも、配布バイトリーダーが事務連絡しに来ることも多い。その結果私は受け取ることができない。そうでない場合は、なんとなく手を止めて渡そうとしない。

 なぜなのだ。ティッシュ受け取れない呪いがかかっているとしか思えない。記憶をさぐってみてもティッシュ配布の人に意地悪したことはないはずだ。ましてや、浜辺で子供達にまじってティッシュ配布のカメをいじめたこともないし、柿のタネとティッシュをカニと交換したこともなく、犬と猿とキジをお供にして鬼ヶ島の鬼を退治し、島から大量のポケットティッシュを持ち帰ったこともない。現世でなければ、前世で彼らの故郷のティッシュ配布バイト村を焼き払ったのであろうか。

ポケットティッシュ配布は不況のため減少し、新型コロナ流行の感染防止のため絶滅した。ポケットティッシュ配布を滅ぼしたのは新型コロナなのだから、もし呪いをかけるのであれば私ではなく新型コロナにかけるべきであろう。

 昨日、蔓延防止策が終了したためか、久々にティッシュ配りをみかけた。そろそろ呪いも取れているのではないかとおそるおそる近づく。私の番になるとティッシュ配りの人は急に小休止の態勢となり息抜きに空に流れる雲を眺め始めた。

 またポケットティッシュを受け取ることができなかった。やはり三代前のご先祖がポケットティッシュ配布の人を無礼打ちしていないか調べる必要があるのではないだろうか。水に流して忘れることは難しい。トイレットペーパーではなく、ティッシュだけに。  

 ……と、これを書いてアップロードしたら、今朝はポケットティシュを貰えた。雑文にはお祓いの効能もあるようだ。しかし、故郷の村を焼かれたティシュ配布村のエルフ達の怒りが消え去ったとは思えない。せめて現世では背中に背負ったティシュに火をつけられてカチカチ山にならないよう気をつける事にしよう。

 


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