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213.Alphabet 20220324

2021年12月20日―2022年3月22日 
@Nise_gatsu
 

Acrobat_相方がシーソーの端に飛び乗り私の身体が空中に投げ出される。空中で回転し世界がクルクルと回る様子を眺める。身体を伸ばしシーソーの端に着地する。シーソーの反対側にいた私がジャンプする。空中に飛んでいる間に相方と入れ変わる大魔術に観客は気がつかない。

 

Behind_コンビニのAIロボットは樹脂製の光る眼で客を観察し仮面の裏から本部へ報告する。自身の情報を無断でどこかへ垂れ流され管理されることを嫌がる客は光学迷彩を施したAIロボットをコンビニに派遣しコーラやポテトチップを購入する。無人の店舗にロボット達がお互いに監視しながら動き回る。

 

Camouflage_光学迷彩AIロボットはコンビニを出たところで駐車しようとした車に衝突し動作停止する。光学迷彩は太陽光で稼働し、いつまでも誰も気がつかない。ときどき通行人がつまづくので妖怪つまづき小僧の都市伝説が生まれ、キャラクターは商標登録されコンビニ商品とタイアップされる。

 

Dolphin_トラックにはねられて死んだと思ったら異世界転生していた。水中の気楽な生活かと思っていたら、イルカはイルカなりにイルカ間関係が愛憎入り乱れる疲れる生活だった。魚をとるノルマがきついブラック勤務。あいにくイルカはトラックにはねられることはないので転生には期待できない

 

Epilogue_温暖化で海水面は上昇していく。南極の氷が解けても海面上昇はとまらず人が住める土地はどんどん縮小していった。どこからか水が補充され地球は完全に水没した。それでも水面上昇はとまらず水球は宇宙空間へ膨張する。いずれ太陽は海に飲み込まれ、そして銀河も海に満たされる。

 

Focus_銀河は巨大な水球となりイルカたちは泳いで宇宙旅行にするようになった。泳いだ先で出会った他の知的生命体と交流を重ねイルカの知性はますます増大した。銀河は回転により扁平となり水の巨大なレンズとなる。レンズが集める光が何を投影し、誰がそれを見ているのかそれはイルカにもわからない。

 

Gradated_複数の銀河系レンズで段階的に集約された何らかの波動は宇宙の端の恒星系に送られていた。イルカは惑星レベルの水球を形成し宇宙船に仕立て謎の恒星系に向かう。単に好奇心を満たすために。

 

HERE_イルカが到着した惑星には肉体を捨てデジタル化した住民が巨大なレンズで宇宙中から収集した情報を栄養源として暮らしていた。イルカはレンズでは得られない具体的な個体生活に関する情報を提供し、その対価としてこの宇宙が存在する理由を教えてもらう。

 

Insomnia_最近眠れない。ベッドの中でゴロゴロする内に朝。ちょっと眠いような気がするがそのまま出社する。電車の中で吊革につかまりながら目をつむる。溜まっていた睡魔が身体から染み出し乗客が次々に眠り始める。睡魔は車両全体を包み込み電車は線路と共に眠りにつく。 Focus_銀河は巨大な水球となりイルカたちは泳いで宇宙旅行にするようになった。泳いだ先で出会った他の知的生命体と交流を重ねイルカの知性はますます増大した。銀河は回転により扁平となり水の巨大なレンズとなる。レンズが集める光が何を投影し、誰がそれを見ているのかそれはイルカにもわからない

 

Japanese_ 「空気読めよ」根拠なく相手を従わせたい時に使います。
「忖度」根拠なく相手に従いたい時に使います。
「エビデンス」根拠を求める場合、日本語では無理なので外来語を使用します。

 

Key_キーホルダーの鍵をジャラジャラいわせながらエレベーターに乗る。仕事納めの行事のための地下の金庫に行くように言われたのだが、場所しか教えてくれない。地下のボタンをメモの通り複雑な順番に押す。エレベーターは降り続け、扉が開き暗闇の向こうから鍵がジャラジャラと鳴る音が近づいてくる。

 

Light_ライト代わりにスマホをつけてみる。エレベーターの扉の向こうの鏡にスマホと鍵の束を持った自分の姿が見える。金庫を開けようと順番に鍵を試してみる。鏡の中の自分が私より先に金庫を開け、中身を取り出してエレベーターに乗り込む。扉が閉まると同時にスマホの明かりが消え暗闇に取り残される

 

Mass_質量の存在により発生する空間の歪みが重力である。質量が存在しない宇宙では空間は歪むこともなくおろしたてのシーツのように清潔である。座標が設定できないため物質のない空間は存在するとはいえない。従って存在する空間は全て歪んでいる。歪んだ空間に生まれた私の性格が歪むのは必然である

 

NOSTALGIA_日曜夕方には昭和の家族を描いたアニメ番組の放映が続いている。昭和の頃を懐かしがる人達はとっくに寿命で死に絶え、というか人類は絶滅し視聴者も、更に言えばTV受信機の実機すら現存していない。AIにて自動生成された番組の電波が懐かしさをのせて毎週発信され続けていく。

 

O.K._玄関の扉を閉めたあと部屋の灯りを消したか気になって戻る。ちゃんと消えていたのを確かめる。玄関の鍵を閉めたあとガスの元栓を閉めたか気になってキッチンまで戻る。閉まっているのを確認し、他に見落としがないか一通り見てから家をでる。これで安心して樹海に行ける。

 

PIERROT_吹雪が止んだ快晴の朝、凍った湖上を歩き進む。湖の真ん中、雪をかき分けて現れた氷の下には道化師の衣装の死体が漂っているのが見える。湖底深く沈んだ死体はこの日だけ水面近くに浮いてくる。氷の下からこちらを見つめる目は、まだそっちにいるのかいと問いかけてくる。

 

Q(Cue):目が覚めると隣には見知らぬ人の死体。私がやったのか思い出せない。警察がかけつける。私の脈を計り目を覗き込む。何も聞いてこないが聞かれたとしても何も覚えていないので答えられないから黙っている。担架に何故か私が載せられサイレンを鳴らさない救急車で運ばれる。

 

Rap_冷蔵庫の音が響く夜
スリッパの音
誰もいないはずなのに
これはラップ音か
 
冷蔵庫の扉を
何度も開閉する音
僕以外いないはずなのに
これもラップ音か
 
おかずの皿に透明フィルム
かぶせる音
誰もいないキッチンから
これはクレラップの音

 

Stairs_小山のふもとの鳥居をくぐり石段を登る。月明かりに照らされ、濡れた石段は鈍く光っている。左右の林は闇に塗りつぶされ風の音と自分の息の音しか聞こえない。登っても登っても小山の天辺にあるはずの神社は見えてこない。諦めてもう降りようと振り返る。石段のふもとは闇に紛れて見えない。

 

Tripper (つまずく人)_駅を出て家路をとぼとぼ歩く。太ももを上げる筋力が弱ってきて歩く時に爪先が思ったより上がっていない。ちょっとした凸凹でつまずく。つま先が引っかかるのでしまいにはつま先から靴底が剥がれていく。家がどこだったか思い出せない。完全に底が剥がれた靴のまま歩き続ける。

 

Ultra_朝目が覚めたら超人になっていたので超窓を開けて超空気を入れ替える。超食を食べて超ネクタイを締め超出勤する。超仕事に取り掛かり超書類を作成し超根回しをして超会議のあと超出張費を超精算する。超退社の途中で悪人を見かけたが超見て見ぬ振りする。超帰宅後、超風呂と超晩御飯。超就寝。

 

InVader_こんにちはインベーダーです。本日は地球侵略にあたりご挨拶にまいりました。多々ご迷惑をお掛けすることもあろうかとは存じますがご理解を賜りますようお願いいたします。今後の計画につきましては回覧板にてお知らせをご確認ください。さて早速ではございますがこの全権委譲書にサインを

 

Wild_街中というのに野生の虎が現れて俺の目を見つめる。目を逸らすことも動くこともできない。虎は何かを諦め目をそらし立ち去ろうとする。駆けつけた猟友会が発砲し虎に命中する。瀕死の虎となった俺は呆然と立つ俺を見る。視界が徐々に暗くなっていく。こうして俺の中の野生は日々死んでいく。

 

X∞_蛙の歌が 蛙の歌が 蛙の歌が 蛙の歌 蛙の歌 蛙の歌 蛙のう 蛙のう 蛙のう 蛙のう 蛙の 蛙の 蛙の 蛙 蛙 蛙 かえ かえ かえ かえ か か か か K K K K か か か かえ かえ かえ かえ 蛙 蛙 蛙 蛙の 蛙の 蛙の 蛙の 蛙の歌 蛙の歌 蛙の歌が聞こえてこない

 

Yellow_春は花粉と黄砂が舞う黄色い空と共に訪れる。全ての遠景が霞み、ランドマークを見失って歩行者は道を迷い続ける。歩き疲れた頃には必ず桜の木がある。立ち止まると咲き誇る桜から目を離せなくなり、座り込んだまま桜の木の根本にて朽ち果て来年の桜の養分となる。

 

citiZens_ 市民は、権利と義務を自覚している。市民は、税金の公正な負担分を納める。市民は、異なる視点を持つ権利を尊重する。市民は、常に真っ当な市民であるとは限らず、いつしか自らの影におびえ逃げ隠れする。市民は、生まれ出て成長し成熟の後、老化する。市民はそれらのいずれかの段階で死ぬ。

 


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