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210.五十音(50字) 20220320

2019年2月17日―2019年5月15日 
@Nise_gatsu #50字小説
 

【あ】
愛なんて幻想よ。この愛は永遠だと誓うよ。バカね、そんな事本当に信じているの?私たち自身が幻想なのに。

 

【い】
いい加減に生きてきたけど、俺もとうとう年貢の納め時かな。そう言って新郎は結婚式に米俵を担いで行った。

 

【う】
ウィーンでは声が綺麗な子供は合唱団で歳を取らない呪いがかけられるのさと少年は古いパスポートを見せた。

 

【え】
栄冠は君へ!だけど実利は僕のもの。いわば君は裸の王様なんだよ。王様は裸だ!と叫ぶ子供が現れるまでは。

 

【お】
美味しいと評判のレストラン。長蛇の列が並ぶ。待つ間に空腹になるのを見込んで屋台が並ぶようになった。

 

【か】
怪異の屋敷で一晩過ごしたが何も起こらなかったと言う君が、そこはもう更地だよと告げられ姿が薄れていく。

 

【き】
黄色のレインコートに青い帽子、赤の長靴を履いた子供が四人、交差点で出会いお互い見つめあって動かない。

 

【く】
杭を抜いた跡の深い穴から魔神が現れ願いを言えと。願いは自分で叶えるからと断る。いいのか?くいはない。

 

【け】
警察は信頼できない。私が真犯人を探す。そう宣言した時、一番信頼できないのは自分である事を忘れていた。

 

【こ】
コインを入れ洗濯機の蓋を開けると中の人と目が合う。洗剤を入れ店から出ようと扉を開けるとまた目が合う。

 

【さ】
再度挑戦してみたが、何度やっても人間に生まれ変わってしまう。どんな罰ゲームだよ、まったく。もう一度。

 

【し】
敷いてみたが、いまいち。巻こうとすると床に貼りつき絨毯は剥がれない。模様が変わる。壁に広がっていく。

 

【す】
水槽の金魚は優雅に見えても結局外に出られない私と同じね。目がさめると空の水槽の底に乾いた砂利だけが。

 

【せ】
セイタカアワダチソウの背が低いと名前は?人類絶滅して私一人だから間に立てないけど人間って言って良い?

 

【そ】
添い寝の子供が寝返りで布団の外。追いかけてゴロゴロ。更に寝返ってゴロゴロ。いつまでも二人でゴロゴロ。

 

【た】
大会は急遽中止。既にスタートしてたマラソン選手達は会場と共に撤去されたゴールを求めて今も走り続ける。

 

【つ】
ついに森羅万象問題解決機械を発明。全ての問題は人類が殲滅すれば解決。さあこのボタンを押してみなさい。

 

【て】
体よく追い出されたので次を探す。街頭の少ないひと気のない夜道をひたすら歩き注文の少ない料理店を探す。

 

【と】
問1.隆君が時速5kmで出発し反物質の兄が倍の速度で追い掛けました。世界の終りまでに追いつけますか?

 

【な】
ないものはないから返せないと言ったら、じゃあそれを貰っていきますと借金取りが0の概念をもっていった。

 

【に】
兄さんはヤバいシヴァ神狩りに弟は三途の川で選択に。兄と世界どちらを救う?河神から大きな物が

 

【ぬ】
ぬいぐるみの縫い目のほつれから無数の目がこちらを覗いている。知らないふりして綿をグイグイと押し込む。

 

【ね】
寝入りばなの枕元でタヌキが何か話しかけてくる。眠くて相手ができない。朝起きると枕元にドングリが一つ。

 

【の】
ノイズ交じりのアナウンスが昔のホームに響き、列車だったものが突入してくる。かつては私だった物の方へ。

 

【は】
灰の山が噴き上がり人の形になる。三つの望みを言おうとすると、灰は春の嵐に飛ばされて上空へ舞い上がる。

 

【ひ】
ひい爺さんはお供を連れて鬼ヶ島に渡ったことがあるそうだ。その後の事は暗い目をして何も話してくれない。

 

【ふ】
ふいに地球が回転する音が響き始め、ゆっくりと地面が傾き、地軸と同じ角度になったところで止まるという。

 

【へ】
塀に両側を囲まれた路地の先に私綺麗?と尋ねてくる白装束の人。戻ろうにも井戸が掘られて引き返せない。

 

【ほ】
保育園の教室に戻れず迷い込んだ薄暗い聖堂のステンドグラスの光がマリア像を照らしていたという捏造記憶。

 

【ま】
迷子の手を引き彷徨うが交番が見つからない。たどり着いた交番には警官がいない。途方に暮れた二人の迷子。

 

【み】
ミイラを運び出す道具を待つ時間が長くてそのまま眠ってしまう。目を覚ますとミイラと一緒に運ばれている。

 

【む】
無意味な行動のように思われかもしれませんが、少なくとも無意味という意味はあるし無駄という意義もある。

 

【め】
冥界の魔王が現れ疲れたので代わってと言う。気の毒に思って交代してみたが犬を愛でるしかやることがない。

 

【も】
もいちどだけ試そうとドアノブを回すと今度は開いた。暗くて中がよく見えない。背中を押されドアが閉まる。

 

【や】
刃は剥き出しのまま細い糸で吊り下げられ風に揺れている。頭の上にそんなものは無いかのように生活は続く。

 

【ゆ】
遺言に従い森の奥の湖に散骨する。女神が現れ落としたのはと聞いてきて金の骨も銀の骨も断るのに骨を折る。

 

【よ】
宵闇と晦冥の隙間から名状し難き者供の声が漏れ聞こえている。現れた人間の気配に驚き私は暗闇に逃げ帰る。

 

【ら】
雷光と共に現れた男は雷鳴と共に消えていった。何か言いたげな様子だったのだが聞き取る事は出来なかった。

 

【り】
リーズナブルな値段に惹かれて購入したが置き場所がない。とりあえず一緒にソファに座ってTVを見ている。

 

【る】
塁に出たがルールが判らない。球が高く打ち上がり走り出す。戻れと叫ばれて思わず人に化ける前の姿に戻る。

 

【れ】
令和に未だ実感湧かず。ついHなどと書いてしまう。どれくらいで慣れるのだろうか。もう令和三百年なのに。

 

【ろ】
ロイター共同によりますと昨日未明、東京上空に多数の円盤が飛来。怪光線により都民が巨大化した模様です。

 

【わ】
ワイシャツの袖がひどく絡まってクラインの壷になっている。無理に着たら身体が裏返しになり出社できない。

 

【を】
を新しいものに代えようと思うの、いいかしら?あ、ごめん聞いてなかった。でも君の好きなようにしていいんじゃないかな?貴方のそういうところが嫌なのよ。ナイフが振りかざされる。新しい夫に代える話だったのか。

 

【ん】
んい、弍位、壱位と努力が実り順位が上がったのだが零位、マイナス位と進んでしまい有り難みが減っていく。

 


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