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184. nは最大 20141113


 

nは最大

 さきほど存在が証明された最大の自然数nについて、どの程度の大きさであるのか考えてみよう。

 nが無限大であると仮定すると、宇宙は有限であることから判断して、nは宇宙を超えた大きさとなる。自然は宇宙の一部であることから、宇宙を超えた数は不自然である。したがって自然数nは無限大ではない。

 ではどの程度の大きさなのであろうか。

 超立方体の辺の色分け問題を検討するために考えられた数:グレアム数がこれまで人間が考えた数のうち最大の数であると言われている。人間が使用する道具が自然であるかどうかについては議論が分かれるところではあるが、ここでは人間も自然の一部であるとする立場をとる。

 グレアム数を概算してみると、測定可能な範囲の宇宙に存在する粒子一つにつき一桁の数字を対応させても全く足りない。つまりグレアム数は無限大よりは小さいのではあるが、宇宙に存在する粒子の数よりも大きい。したがってこれまた不自然な数であり、自然数ではない。

 それでは不自然ではない範囲で最大の自然数nというのはいくつくらいが適当であろうか。測定可能な範囲の宇宙に存在する粒子の数が適当であろうか。しかしながら粒子の数をすべて数字に変換した場合、存在する粒子全てが数字へと置き換えられ、粒子は消失してしまう。粒子が存在せず、数字だけが存在する宇宙は物質が存在せずしたがって時間も存在できない。不自然である。

 折衷案として粒子を半分カウントして、半分は粒子、残りの半分は数字とするのが、ぎりぎり不自然と言えないこともないけど、まあ自然と言っていいかなという数字であると言える。宇宙全体の粒子の数はおよそ1080個といわれているので、その半分の5x1079がこの宇宙における最大の自然数と定義された。

 ここで本当に5x1079が最大の自然数であるのか検証してみよう。最大の自然数であるならばその数に1を加えても最大の自然数は変わらないはずである。

 5x1079に1を加えた場合、概算してみると約5x1079となり、やはり最大の自然数である。概算では信用できないという人は1から5x1079まで数えてみてかかった時間と、1から(1+5x1079)まで数えてかかった時間を実際に測定して比較してみてください。実験結果のレポートをお待ちしております。

 なお、当然のことであるが観測可能な範囲の宇宙の広さについては宇宙の膨張速度、光速度により規定されるため、ビッグバンの初期値、光速度定数、プランク定数、ダークマターの量などに変更があった場合にはそれに連動して最大の自然数nの値も変更される可能性があるので理科年表は常に最新版を購入しておくことが望ましい。

 このように数学的のみならず科学的に検討を行った結果、我々の直観と大きく異なってしまうことは往々にして発生してしまう。疑似科学的迷信に惑わされることなく科学的な態度で日々を過ごしていきたいものである。

 なお、この雑文に綺麗なことばを一カ月かけ続けると素敵なコラムになります。言葉の力はすごいですね。

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