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176. 14 20141104


 

14

  父が素数の7、母が素数の2という奇矯な夫婦の子供ではあるが、俺自身は特に特徴もない数14として生まれ育ってきた。どれくらい平凡かというとお正月は凧をあげようとして電線に引っかかるから危ないと怒られ、コマを回しそうとして駐車場から追い出され、夏休みには二人乗り自転車で長い坂道をブレーキ一杯握りしめたらゆっくり止まってしまうくらい平凡である。

 このように平凡な男子高校生であるこの俺14が大騒動に巻き込まれることになろうとは、作者の半茶くらいしか知る由もなかった。

 いつものように登校すると先生が「それでは今から14を殺してもらいます」という。なんでも14の生き肝を食べると三千年長生きをするといわれているそうだ。こんな平凡な何の特徴もない数字の生き肝にそんな力があるはずもないと反論するとハンティングナイフを振りかざしながら迫ってきながら先生は説明する。 「数字の始まりであり太祖である1,混沌であり対立をもたらす2,そして世界に動きをもたらす3、貴様の生き肝を食せばその力が手に入れられるという」

「足しても掛けても14にはなりませんよ」

1^2+2^2+3^2=14すなわち貴様の体内にはこの世界を変える力をもつ1,2,3が二乗の密度で隠されているのだ。

「このおれにそんな力が……」

教師が俺の頭にハンティングナイフを振り下ろそうとそたその時、14の体内に秘められていた1,2,3のパワーが解放され、この世界はリセットされた。

どこからか声が聞こえる。

「今度はまともな自然数界になるかな」

「どうかな、また妙な数の世界になるのかもな」
 


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